第98話
橋の下に行くと、そこには誰かがいた。
成長し顔立ちも大人びているが、そいつが岡崎だと一目で分かった。
「よぉ、良く来たな」
岡崎はニヤニヤ笑いながらそう言った。
「……岡崎」
俺は岡崎を睨みながらそう言う。
まさか、またこいつと会うなんて思っても見なかった。
「聞いてるぜ、お前随分な悪役になってるみたいだな」
「……誰のせいだと思ってんだよ」
「まぁ、それもそうさな……あの時のあの事件さえなければお前は普通の高校生活を送れてたかもしれねーしな」
「よく言う」
「まぁでも、お前がここに来たの俺にとってはプラスだったぜ」
「……何があった」
「え……」
俺の言葉に後ろの高弥が驚く。
それもそのはずだ、俺もこの事実を先程岡崎の家で知ったのだから。
「な、何の話しをしてるんだい平斗、敵は岡崎じゃ……」
「こいつは俺を呼び出す為の餌に使われただけだ……恐らく俺に用があるのは別の奴だ」
「良く分かってるみたいじゃ無いか、安心したぜ俺の顔を見た瞬間またぶん殴られるかと思った」
「昨日までは俺だってそう思ってたよ、でも色々と腑に落ちない部分があった、だからお前の家に行き、お前の父親に話しを聞いてきた」
「なるほどな……それなら俺がここで訳を話さなくても済みそうだな」
「ど、どう言うことだい? 全然分からないよ!」
後ろの高弥は俺の肩を掴んで説明を求めてくる。
当たり前だ、昨日までは岡崎を敵だと認識していたのだから。
「高弥、岡崎は今回に関しては何も関与してない」
「どう言うこと?」
「岡崎の名を語って、俺を呼び出そうとしている奴が他に居るんだ」
「な、どう言うことだい? 今回の情報だって僕が調べた確かな情報で……」
「恐らく、今回の奴は岡崎以上に力を持ってるやつだ」
「じゃ、じゃあなんでここに岡崎が居るんだよ!」
「岡崎だって、自分の名前を勝手に使われて黙ってられなかったんだろ、だからどうにかして俺にコンタクトを取ろうとしてたみたいだ」
「そ、そんな素振り無かったじゃないか……」
「俺の名前が出ている以上、お前らは絶対にここに一度来ると思ったからな、この一週間ここでお前らが来るのを待ってたんだよ」
「そ、そう言うことだったのか」
俺が一度岡崎の家に行った理由、それは岡崎の父親に現在の岡崎について聞くつもりだったからだ。
「あの事件以降、岡崎は何も悪さをしていない、それは父親が証言している。現在は父親の仕事を手伝っているらしい」
「で、でも岡崎の父親なんかの言葉を信じるのかい!?」
「あぁ……実は高弥にも言ってなかったけど、俺と岡崎の父親はある時期に定期的に会っていたんだ」
「え!? そ、それはどうしてだい?」
「岡崎の父親は息子の為に中学生を脅すような親馬鹿だったが、俺に申し訳なさもあったようでな……あの後も俺のところに来ては金を渡そうとしたり、最近どうかと聞いてきたりしてな……馬鹿息子と違って、少しはまともだったみたいで、息子の代わりに俺に対して償いのつもりで色々してきてたんだよ」
曲がりなりにも大企業の社長。
最初はただ俺が約束を破るのが怖かっただけかと思ったが、何回か会ううちにこの人が本当に償いの気持ちで俺の元に来ていると知った。
何度も息子が申し訳ない事をしたと息子よりも歳下の俺に頭を下げる岡崎の父親を俺は次第に信用していった。
やられた事を許したわけではない、しかし岡崎の父親が言っていることは本当だと俺は信じていた。
「そんなことが……」
「まぁ、息子が可愛くてやってたのかもしれないけどな……」
岡崎がこのタイミングで俺に喧嘩を振ってくる意味が分からなかった。
だから俺は一度、岡崎の父親に確かめて見ようと思い、先程岡崎の家に行ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます