第97話



「蓮花、テストどうだった?」


「な、なんとか今日返された分は平均60点以上だったわ……」


「良かったじゃん、この調子なら他の教科も大丈夫じゃない?」


「だと良いんだけどねぇ……」


 テスト返却があった日の放課後、私は同じクラスの香奈と話をしながら帰りの準備をしていた。

 私達がそんな話をしている横では香奈の彼氏の悟君とその友達の大島君がテスト用紙を見て、いがみ合っていた。


「こっちは俺の方が点数一点高いんだ! お前の方が馬鹿だろ大島!」


「お前なんて英語は俺よりも5点も低いじゃねぇか! お前の方が馬鹿だ悟!」


「なんだと!」


「やるか!」


「やめなさい馬鹿共」


「いてっ!」


「あだっ!」


 騒いでいる二人がうるさかったからか、香奈はため息を一つ吐いて二人の喧嘩を止め、二人の頭を思い切り叩く。


「か、香奈何を……」


「篠崎! いてぇだろ!」


「どっちも馬鹿なんだから、くだらない事で喧嘩しないの!」


「い、いやでも今回まだ赤点一個もないし……」


「だっせぇー彼女に怒られてやんのぉー」


「あぁ! なんだとぉ!?」


「いい加減にしなさい!」


「あでっ!」


「いでっ!」


 香奈が言い争いを続ける二人を再び叩いた。

 色々あったけどみんなの仲はあれ以来良くなっていた。

 大島君と悟君は何かにつけては言い争いをしてるけど、昔みたいな雰囲気ではなく、お互いにライバルように思っている感じがする。


「はぁ……あの二人は相変わらずね」


「まぁ前よりは良い関係なんじゃない?」


「毎日どっとが島並先輩の弟分かで揉めてるけど、どっちも相手にされてない事に気づいてるのかしら?」


「まぁ、先輩そう言うのは面倒くさがりそうだからね」


「そうだ、今日の結果とりあえず島並先輩に報告に言ったら?」


「とりあえずそれはやめておくわ、 全部返却された時に言いに行くわ」


 先輩の過去の話もその時にじっくり聞きたいし。

 まぁそのためには全教科60点以上を達成しないといけないけど……。


「はぁ……大丈夫かな?」


「今から落ち込んでどうするのよ、大丈夫よ蓮花なら」


「だと良いんだけど……」


「気分変えて、今日はみんなでどっか行く?」


「うん、家に居ても結果だけ気になって落ち着かなそうだし……テストも終わったから羽を伸ばそうかな!」


「よし、そこの二人! あんたらも付き合いなさいよ、また何かあったら困るから」


「え?」


「む?」


 そう香奈が言った瞬間、二人はお互いの頬を引っ張りながらコッチを見た。

 一体どういう状況?


「じゃあ、どこ行く? カラオケ? それともゲームセンター?」


「バッティングセンターなんてどうだ? 体を動かして嫌な事を忘れるって手もあるぞ?」


「それよりボーリングだろバカ」


「あぁ? なんだと悟!」


「あほか、バッティングセンターじゃ女子が打てないだろうが!」


「今は低速の機械も結構あるんだよ!」


 どこに行くかをみんなで話ていると、またしても悟君と大島君が言い争いを始めてしまった。

 

「全く……この馬鹿二人は……」


「あははは……じゃ、じゃあ……ゲームセンターにしましょうか」


 私は苦笑いをしながら二人にそう言う。




 放課後、俺は岡崎の家に行った後、高弥と共に三年前と同じ河川敷の橋の下に向かっていた。

 

「さて、一体今回はどんな手でくるのかねぇ……」


「大丈夫、ピンチになったら僕も加勢するよ」


「まぁ、それは最終手段だな」


「でも、まさか敵のところに行く前に敵の家に行くとは思わなかったよ」


「ちょっと、聞きたいことがあったんだがな……」


「僕は外で待ってたから分からないけど、何をしてきたんだい?」


「それは、あとで教えるよ。それよりも見えたぞ」


 俺はそう言って橋の下を指さした。

 三年前を思い出す、前もこの二人でここに来た。

 そしてそれがこの事態の始まりでもあった。

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