第96話
*
「あれ? 瑠華ちゃん何してたの?」
「あ、いや……知ってる人がさっきまで居て」
私は島並さんと会った後、友達の元に戻っていた。
テストが終わり、みんなで放課後遊びに行こうという話になり、私は道場を休んでみんなと遊びにきていた。
「そうなんだ、それよりプリクラ撮ろうよ」
「あ、うん」
島並さん用事があるっていってたけどなんだろう?
テスト前の勉強会以来会ってないし、明日道場に行ったら会えるかな?
「瑠華ちゃん?」
「え? どうかした?」
「もう、どうしたの? なんかさっきからボーっとして」
「あ、ごめんね。考え事をしてて……」
「瑠華がボーっとするなんて珍しいわね?」
「そ、そうかな?」
「もしかしてテストの結果が不安とか」
「そ、そうじゃないんだけど……」
テストに関してはいつも以上に勉強したこともあって、かなり出来た方だと思う。
気になっているのは島並さんの事なんだけど、それを友達に話ても仕方ないし……そもそも私はなんで島並さんの事をこんなに気にしているんだろ?
「まさか瑠華ちゃん恋?」
「え? こ、恋?」
「うん、私の第六感が瑠華ちゃんのそんな雰囲気を感じ取った気がして」
「第六感って何よ、それに私別に恋なんて……」
「本当にぃ? もしかしてさっきまで居た知ってる人って好きな人だったりして」
「そ、それは……」
どうなんだろう?
私は島並さんに自分が向けている感情が何なのか分からなかった。
島並さんの事を私は尊敬しているし、人としては好きだけど……この気持ちが恋なのかは分からない。
「ちょっと……分からないかも」
「えぇ~本当にぃ~」
「ほ、本当だってば!」
「怪しいなぁ~」
「ねぇねぇ、その人って前に話てた道場の兄弟子さん?」
「今度私たちにも合わせてよ!」
私が分からないといった瞬間、友人達は水を得た魚の如く私を質問攻めにしてきた。
出会いの無い女子高では恋愛の話はすごく盛り上がる。
皆出会いに飢えているようで、こういった話には目がない。
「いや……それはちょっと」
「えぇ~良いじゃ~ん、しかも道場でしょ? 細マッチョのイケメンとか居るでしょ!」
「い、居ないよ、みんな普通の人だし」
「確か女性の門下生も多いんでしょ? 私も今度見学に行こうかなぁ~」
「え? そ、それは……」
なんでだろう、なんでそう言われた瞬間に私は島並さんの顔を思い浮かべてしまったのだろう……。
*
翌日の天気は晴天だった。
学校ではテストの返却が教科ごとに始まり、学校内では歓喜の声や落胆のため息が入り混じっていた。
「まぁ、こんなもんか」
「平斗、テストどうだった?」
「まぁまぁだ」
「まぁまぁで96点の答案を見せられても、自慢にしか聞こえないよ」
「100点が96点にそれを言うなバカ」
「あはは、それもそうだね、でも僕はバカじゃないよ、平斗よりも高得点だからね」
「っち、次は負けねーよ」
俺と高弥は自分達の答案を見せ合いながらそんな話をしていた。
クラスの生徒の大半は俺の点数に疑問を持っているのだろう、なんでこんな奴が高得点なんだと言わんばかりの目で俺を見てるし。
「それで……話は変わるけど行くのかい?」
「あぁ、きっと岡崎も待ってるだろう」
先ほどまでとは打って変わり、高弥は真面目な表情で俺にそう尋ねてきた。
「もうあんな事にならないようにしないとね……」
「あぁ、ついてくんなって言ってもお前はついてくるんだろ?」
「まぁね、止められてもついていくよ」
「はぁ……じゃあ好きにしてくれ」
「それじゃあ早速今日の放課後に」
「その前に行くところがある」
「え? 行くところ?」
「あぁ、重要なところだ」
岡崎に会う前に会わなきゃいけない奴がいる。
まずはその人に会ってからでないと行動には移せない。
「それってどこだ?」
「岡崎の家だ」
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