第95話
*
「全く先輩は!」
私は先輩と別れた後、一人で家に帰っていた。
とりあえずテストも終わり、あとは結果を待つだけなのだが、私には一代イベントが残っている。
それは憧れの真木先輩に告白することだ。
テストが終わった瞬間、私は安心感と共にその事で悩み始めていた。
最近、私は自分の気持ちが分からなくなってきていた。
真木先輩はイケメンだし優しいし、憧れているけど……最近それが本当に好きという気持ちなのか分からなくなり始めていた。
「はぁ……相談乗ってほしかったんだけどな」
今まで色々協力してくれた先輩だからこそ、相談したかったんだけど、なんか先輩用事あるとか言ってどっか行っちゃったし。
ため息を吐きながら帰り道を歩いていると後ろから声を掛けられた。
「初白さん」
「え? あ、真木先輩」
声を掛けてきたのは真木先輩だった。
「真木先輩も今帰りですか?」
「あぁ、ちょっと用事があってね。そういえばテストはどうだった?」
「やるだけのことはやったので、あとは結果を待つだけって感じですね」
「そっか、でも初白さん頑張ってたし、大丈夫だよ」
「ありがとうございます。そうだと良いんですけど……」
少し前までは会話も出来なかったのに、今はこうして普通に会話が出来てる。
これもまぁ……島並先輩のおかげなのかもしれないけど。
「初白さんはさ……平斗の事好きかい?」
「え!? い、いきなりなんですか?」
「あぁ、ごめんごめん。好きっていうのは人としてってことだよ」
「あ、あぁ……そう言う意味ですか」
ビックリした。
まさか真木先輩からそんな事を聞かれるなんて思ってもみなかった。
島並先輩か……まぁ嫌いではないし……。
「まぁ、人として好きだと思いますよ。私には冷たいですけど」
「あははは、そっかそっか、まぁ確かに平斗は初白さんには少し冷たいかもね」
「いや、相当ですよ! 全く私の事をなんだと思ってるんだか!」
「それはきっと、大切にしてると思うよ」
「そうですかね?」
「あぁ、平斗は心を許した相手にはそうやって冷たい態度を取ったりするからね……どうでも良い人は相手にすらしないよ」
「そういうものなんですかね……」
真木先輩はそう言いながら私を見て、ハニカミながら続けた。
「君を見ていると昔の友人を思い出すよ」
「昔の? 中学の頃のですか?」
「うん……前に見ただろ? ファーストフード店で会ったあの」
「あぁ、あの綺麗な人ですか?」
「そうだよ、昔はあの子……村谷と僕、そして平斗で良く一緒にいたんだ」
「そうだったんですか……」
「うん、もう平斗の噂は知ってると思うけど、あの事件以降、彼女は平斗や平斗を庇う僕を敵視するようになってね……仲たがいしてしまったんだ……」
「………確か島並先輩がその人の彼氏をボコボコにしたんでしたっけ?」
「噂ではね……でもちゃんと理由があったんだ……」
「その理由って……なんなんですか?」
「おっと、それは平斗と約束したんだろ? ちゃんと平均点を取れてから平斗本人から聞くと良いよ」
うまくいけばここで聞けると思ったけど、流石にそう上手くはいかないようだ。
「そうですね、まぁそのためには平均60点取らないといけないんですけど」
「大丈夫だよ、初白さんの頑張りを僕は一番近くで見てたからね」
「そ、そうですか? えへへ……」
やっぱりイケメンから言われると照れるなぁ~。
真木先輩は島並先輩と違って優しいし、イケメンだし!
やっぱり私はきっと真木先輩の事が好きなんだ!
そんな事を考えていると、真木先輩のスマホが鳴った。
「あ、ごめん電話みたい」
「あ、じゃあ私はここから左なのでお先に」
「うん、わかったよ、じゃあまた明日ね」
「はい!」
私は真木先輩にそう言ってその場を離れ、自分の家に帰って行った。
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