第94話

「はいはい悪かった悪かった」


「まったく、先輩はもっと私を大切にして下さい!」


「してるだろ?」


「してません!!」


「なんでも良いけどな……あ、じゃあそろそろ俺はこの辺で」


「ちょっと待って下さい、先輩の家逆方向じゃないですか?」


「だから用事があんだよ、じゃあ俺はこの辺で」


「む~少しは協力して下さいよ!」


「してやってるだろうが……」


 俺はそう言って、初白から離れてこの間村谷が居たゲームセンターに向かう。

 この前ゲームセンターからもしかしたら来ているかと思ったが、今日は居ないようだ。

 

「他を当たってみるか……」


 俺がそんな事を考えていると、誰かが俺の背中をトントンと二回叩いてきた。

 

「はい? って城崎さん?」


「島並さんこんにちわ、島並さんも今学校終わりですか?」


「あぁ、てか城崎さんがゲームセンターに来るなんて意外だな」


「あ、いえ……友達に誘われまして……」


「へぇ、そっかじゃあ今日は友達と一緒なの?」


「はい、テストが終わって皆で遊びに」


「そっか、どうだった手応えあった?」


「はい! 島並先輩のおかげでバッチリでした!」


「そっか、それは良かったよ。じゃあ、俺はちょっと用事があるから」


「あ、そうなんですか? もう少しお話したかったんですけど……」


「ごめんね、ちょっと急いでるんだ、また道場でね」


「あ……島並さん」


 俺は城崎さんにそう言って、ゲームセンターを離れた。

 ここにも居ないとなると、村谷がどこに居るかなんて俺には分からない。

 

「どうする……あいつの行動パターンなんてしらねーしな……」


 岡崎が村谷に接触する事は恐らく無い。

 しかし、万が一と言う事もあるので、最近何か変わったことが無いかぐらいは聞かなくてはいけない。


「うーむ……」


「ん? げ……」


「ん? あ! 村谷!!」


 俺が考え事をしながら信号待ちをしていると、目の前に制服姿の村谷が現れた。

 幸運にも偶然遭遇出来たのだが……残念ながら向こうはそうは思っていないようだ……。

「………どちら様ですか?」


「………まぁ、お前の気持ちも分かるよ……だからこれは一人事だと思ってくれ」


「………」


「何か最近変わったことはあったか?」


「………」


「無いなら良いんだ……悪いな………もう消えるよ」


「………ねぇ」


「え?」


 ずっと無視を続けていた村谷が急に俺に話し掛けてきた。


「……三年前……なんであんな事したの……」


「…………噂の通りだよ、ムカついたから岡崎の奴を殴ったんだよ」


「………本当?」


「………本当だよ」


「………あ、そう………」


 村谷はそう言うと俺の元を離れて行った。


「いまさら何を聞いてんだよ……」


 俺はそう呟きながら、高弥に連絡を入れる。

「もしもし? 高弥か?」


『うん、どうだった? 村谷はいた?』


「あぁ、恐らく村谷と岡崎は接触してないと思う」


『そっか……こっちも色々調べてみたけど……岡崎の奴、懲りずにまた質の悪い奴らと関わってるみたいだ』


「……そうか、それで岡崎がどこに居るのか分かったか?」


『あぁ、僕たちを挑発してるのか分からないけど、あの橋の下に居たよ』


「……あそこか……分かった、もしかしたらまた何か岡崎が動くかもしれない……その前に話しを付けに行ってくる」


『一人で行く……なんて言わないよね?』


「高弥、これは俺と岡崎の問題だ」


『三年前の続きだって言うなら、僕にも関係あるだろ? 今度は必ず僕が君を助けるよ』


「………何言ってんだよアホ……」


『行くなら明日以降だよ、今日はもう橋の下には居ないからね』


「あぁ、分かった」


 俺はそう言って電話を切った。


「岡崎……あんまり俺を舐めるなよ……」


 まさか、また岡崎と会うことになるなんてな……。

 あいつは以前、俺の力を見誤って負けた事を理解しているはずだ。

 今回、あいつの目的が俺への復讐だとするなら、三年前以上の戦力を持ってきてるはずだ。


「今回は少し厄介かもな……」

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