第92話
「俺はもう襲われてるんだ……俺が好む好まないに関わらず、俺はもうこの件に首を突っ込んじまってるんだ」
「深入りするなってことだよ、もう村谷は心配無い、全部終わったんだ」
「そうかもしれない……でも、もし岡崎の親が約束を破ってるのなら……俺は岡崎をぶちのめしに行く」
「………あのねぇ……もう僕らに危険はないし彼女にも危険はないんだ、それに……僕は君がこれ以上泥を被る姿を見たくないよ」
「……ありがとよ」
俺はそう言いながら高弥に笑いかける。
「……優し過ぎるのも良くないよ」
「あぁそうだな……」
俺たちはそんな話しをしながら、自宅に帰って行った。
*
「うぅ~分からない……」
私、初白蓮花は明日のテストに向けての勉強を家でしていた。
時刻は夜の22時を回っており、若干眠くなってきたけど、平均点数60点以上を取るために私はいままで一番勉強していた。
しかし、最近私はとある事が気がかりで勉強に身が入らなくなってきていた。
「あの子……島並さんを狙ってるのかな?」
そう!
島並先輩はこの前一緒に居たあの後輩の女の子!
なんであの子にはあんなに優しいのよ!
私には一切優しく無いのに!
何あの態度の違い!?
マジで信じられない!
先輩に取っての可愛い後輩ポジションは私だと思ったのに!
「あぁもう! なんで私が島並先輩の事で悩まないといけないのよ!!」
なんで島並先輩の事で私がモヤモヤしなきゃいけないの?
私はこのテストが終わったら憧れの真木先輩に告白するっていう大事なイベントが………ある……はず………なのに……。
「なんでこんなに私……戸惑ってるんだろ?」
結局その後も一切勉強は進まなかった。
*
「あの子……可愛かったなぁ……」
私、城崎瑠華はこの前合った島並さんの後輩の女の子の事を考えていた。
島並さんはただの後輩だって言ってたけど……本当なのかな?
「学校では一緒なのかな?」
明日もテストだと言うのに、私はその事が気になって勉強に集中出来なかった。
「そもそも、なんでこんな事を気にしてるんだろ?」
島並さんはただの道場の先輩で私の指導をしてくれる兄弟子ってだけの存在のはずなんだけど……。
なんで私はこんなに毎日島並さんの事を考えてるんだろ……。
「……勉強しなきゃ」
そう思って教科書に向かうのに、頭の中では島並先輩の事を考えてしまう。
「……島並さん……何してるかな?」
私はふとスマホを手に取る。
時刻は22時、こんな時間に電話をするのは失礼かな?
そんな事を考えていたら、すっかり深夜になってしまい、私はまったく勉強が出来なかった。
*
テスト最終日の放課後、その日の放課後は生徒に取っては最高の放課後だ。
テストという呪縛から解放され、生徒は思い思いにテストのストレスを発散させる。
結果?
そんな物は二の次だ。
今はテストが終わったという開放感に生徒全員が浸っている。
しかし、俺はそうもいかない。
先日の岡崎の一件がまだ片付いていないからだ。
だから俺は早く帰って、岡崎の家を訪ねようとしていたのだが……。
「先輩! ちょっと面貸して貰えますか?」
「は?」
人生で始めて、面を貸すことになってしまった。
「なんだよ初白、テストはどうだったんだ?」
「後は結果に任せるだけです! むふー!」
「あっそ」
屋上に呼び出され、俺の目の前に初白は腕を組んでどや顔をする。
「で、なんだよ。何か用事があるんだろ?」
「はいもちろんです! えぇっと……あの……その……なんでしたっけ?」
「なんで俺に聞くんだよ!」
「いや、ちょっとど忘れを……」
「アホか! ちゃんと思い出してから話せアホ!」
「あぁ! またアホって言いましたね! なんで先輩はこんなに可愛い後輩に優しく出来ないんですか!?」
「え? 可愛い後輩? 誰が?」
「ふん!」
「うぉ! あぶなっ! 足を踏もうとするなアホ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます