第90話
「何か策でもあるのか……」
「それよりこの動画がどうして取られたのかもだよ! 岡崎や不良達の他に誰かがあの場所に居たってことに……」
「どっちしろこんな事をしたんだ……恐らく岡崎か誰かが俺に接触して来るだろう……だが、今はそれよりも……」
俺が心配だったのは自分の事よりも村谷の事だった。
まさか昨日のせいで岡崎から何か酷い事をされたんじゃないだろうか?
俺は急いで教室に向かった。
すると、廊下でバッタリ村谷に会った。
「む、村谷!」
「………」
パチーン。
大きな音が学校中に響き渡った。
村谷は俺と会った瞬間、俺の頬を思い切り打った。
「なんで……なんであんなことしたのよ!」
「村谷……お前」
「聞いてくれ村谷さん平斗は!」
遅れてきた高弥は俺と村谷の間に入り、村谷を説明をしようとする。
「なんで……なんでこんな事をしたの……ずっと応援してくれてるって……信じてたのに!」
「村谷さん! あの岡崎って奴は!」
「昨日病院で会ったわよ! あんな大怪我させるなんて最低よ!」
「だから話しを聞いてくれ!」
その後の会話はあまり覚えていない。
俺は彼女に悲しんで欲しくないから、あの男を殴ったはずなのに……彼女は俺では無く岡崎を信じて泣いている。
一体岡崎に何を吹き込まれたのかは分からない。
しかし、その一方で俺はこの様子だと岡崎に何かされたということは無いのだろうと安心していた。
「あんた達なんて……大っ嫌い!」
村谷とはそれから話しをしなくなった。
それどころか、教室中から俺はヤバイ奴として認識されてしまい、誰も俺に話し掛けてこなくなった。
そして、放課後俺はとある人物に呼び止められた。
「君が島並君か?」
「………誰ですか?」
呼び止めてきたのはスーツ姿の男だった。
高そうな黒塗りの車から下りてきた男は俺に名乗った。
「岡崎と言えば分かるかな?」
「………あの馬鹿息子の父親か……あの動画もアンタの仕業か?」
「あぁ、あんなのでも息子なのでね、親としては助けてやらねばならん」
「………それで俺に何のようだ? 仕返しでもしにきたのか?」
「とんでもない、私は君がどんなに強いかを動画で見て知っている」
「じゃあ、なんだよ」
「少し話しをしよう時間は良いかな?」
「………あぁ」
俺は少し警戒したが、岡崎の父親に言われるまま車に乗った。
岡崎の父親は俺を自宅に連れてきた。
そこには顔中包帯だらけの岡崎がいた。
「いい顔だな」
「んだとぉ? てめぇ……昨日は良くも」
「やめておきなさい大賀、お前は負けたんだ」
「でも親父!」
「それに君は大賀の弱みを握っているようだね」
「なるほど……自分じゃどうしようも無くなってパパに頼ってとこか……それがどうした?」
「その弱みをこちらに渡して欲しい」
「嫌だといったら?」
「君の大切な女の子がもっと酷い目に遭う」
子がクズなら親もクズだなと俺はこの時そう思った。
恐らくあの動画も俺との交渉を有利に進める為の作戦だろう。
こちらにも弱みが有るという力の証明。
俺は男の顔を見ながら、静かに言う。
「忘れるなよ、こっちもアンタの息子のやってきたヤバイ犯罪の数々を握ってるんだ、同じようにネットに晒せば、こいつの人生も終わりだ」
「ふむ……それを避けたいからこうして交渉しているのだよ。君が息子の証拠を破棄するというのなら、こちらも息子が持っている弱みをすべて破棄しよう」
「スマホだけじゃ無かったんだな……やっぱり」
まぁ、バックアップはあると思ったが……。
「けど、それだと取引にならないな、こっちは昨日の動画をネットに上げられてるんだ、もう一つ俺からの要件を飲め」
「………聞こう」
岡崎の父親は眉一つ動かさず俺にそう言う。 俺はそんな岡崎の父親に静かに言った。
「もう二度と村谷に関わるなそれだけだ」
「……そんな事で良いのか? あんな女もう捨てるつもりだったから良いよ」
笑いながらそう言う岡崎を俺は睨み付ける。
「ひっ!」
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