第89話
「まぁまぁ落ち着けてって、安心しろよ俺はまだ千咲には手を出してないからよ」
「だったとしても俺はお前のやった事を許す気はねぇよ、さっさと奥の手でも何でもだせ」
そう言うと岡崎はニヤニヤと笑いながら、俺達の後ろを指さした。
「もう来てるぜ」
後ろを振り向くとそこには倒れている高校生よりも明らかに歳が上の男達が大勢いた。
「うわぁいつの間にって感じだね」
「高弥、悪いが自分の身は自分で守れよ」
「分かってるって、それに平斗ならこんなやつら一瞬だろ?」
男達はニヤニヤと笑いながら、俺と高弥に迫ってくる。
「おいおい、随分余裕だな、こいつら相手にした後にこの人数を相手に出来るのか?」
「おい岡崎……少し待ってろ………こいつらと遊んだら次はお前と遊んでやる」
「中坊が! そう言う大口はここに居るやつ全員倒してから言ってみろ!!」
そう岡崎が言った瞬間、俺と高弥に向かって襲いかかってきた。
「おらよ!」
「くたばれ!」
俺は向かってくる男達の攻撃を避け、一人また一人と男達を地面に伏せて行く。
「ぐあ!」
「こ、このガキっ……」
「つ、つぇ……」
半数を倒したところで男達の勢いは無くなり、後ずさる者達が現れた。
そして俺は残った男達に静かに言う。
「痛い目みたく無かったらさっさと消えろ……俺は今日少し機嫌が悪いんだ」
そう言った瞬間、男達は顔を合わせ急いでその場から離れて行った。
「な……なんでこんな……」
後ろで岡崎は腰を抜かしていた。
恐らく俺の力を見誤ったのだろう。
まぁ、普通ならあの状況であの数で負けるなんて思わないだろうけど……。
俺はゆっくり岡崎の方を振り向き静かに尋ねる。
「さて……後はお前だけだが……お前はどうしたい?」
「は? な、何を言ってんだよ……」
「選ばせてやる……大人しくお前の持ってる弱みを俺に渡すか……それとも俺に倒されて渡すかだ……選べ」
「ふ、ふざけんじゃねぇ!! 誰がお前みたいな中坊の言うことを……あがっ!!」
俺は岡崎の近くまで行き、岡崎の首を持って持ち上げる。
「お前……まだそんな事を言ってるのか? ハッキリ言って、俺とお前の差は天と地以上だ諦めろ……年貢の収め時ってやつだ」
「く、くそっ! い、良いのか! 俺に手を出してみろ! 千咲の画像をネットのさらし者にしてやるぞ!」
そういってスマホを見せつけてくる岡崎。
こいつ……さっき手を出しては居ないと言ってたが……嘘か。
「そうか、なら俺はお前がそんな事出来ないようにするだけだ」
「へ……ぐはっ!」
俺は岡崎の顔面に一発拳を叩き込んだ。
俺はそのまま岡崎の手から落ちたスマホを踏み潰す。
「他にデータはあるのか?」
「うぅ……な、ない……です……ゆるして……下さい」
「……そうかもう二度とあいつに近づくな近づいたら……俺はまたお前の顔面を潰しにくるぞ色男」
俺は岡崎から手を離し、高弥と共にその場を後にした。
しかし、俺は気がついて居なかった。
このとき、俺たち以外にもこの一部始終を見ていた人物がいたことを……。
*
翌日、俺が学校に行くと俺を見る生徒の目が冷たかった。
「なんだ……俺の顔に何かついてるか?」
「平斗! 大変だ!」
「どうしたんだ?」
「この動画を見てくれ!」
高弥は慌てた様子で俺の元にやってきて、スマホの動画を見せる。
そこには昨日の俺と岡崎が写っていた。
俺が岡崎を殴っている姿もバッチリ写ってしまっていた。
「一体どこからこんな動画が!?」
「しかもタイトルを見てくれ、【彼女のストーカーが怖すぎる】って……完全平斗が悪役になってる!」
ハメられた。
俺は直感で理解した。
だから皆俺を冷たい目で見ていたのか……。 動画の内容はこうだった。
最近付き合い始めた女の子の友人、つまり俺がその子のストーカーをしており、邪魔な岡崎を潰そうとしたと……。
「………こっちもあいつの弱みを握ってるのになぜこんな事を……」
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