第88話

「まぁ色々ね」


「なんだよ」


「……女の弱みを握っては不埒なことをしているらしい」


「……なるほどな、でもそんなことをしてるんだったら、近いうちに警察が動きそうじゃないか? お前でも調べられるんだから、警察が調べられないわけないだろ?」


「恐らく岡崎もそうだが、メンバーの中には権力者の子供がいるんだろう。だから手を出せないってことさ」


「……クズの息子はクズってことか……」


「どうする? 多分相手は十数人規模だけど」


「……それだけなら全く問題ない、行ってくる」


「でもいいのかい? 君は武道家だ、私利私欲のためでは無いにしろ素人に暴力をふるうのは問題じゃないのかい?」


「まぁそうだろうな……でもさ……あの馬鹿が悲しむよりはいいだろう?」


「………そうかい、じゃあ僕も行くよ」


「なんでだよ、お前は関係ないだろ?」


「友達だろ? それに僕も彼女が心配だからね」


「……自分の身は自分で守れよ」


「はいはい」


 こうして俺と高弥は二人そろって、河原の橋の下にある岡崎達のたむろしている場所に向かった。

 橋の下には十数人の高校生がいた。

 その中にはもちろん岡崎もいて、中にはたばこを吸っている奴もいた。


「初めまして、クズの皆さん」


「あぁ?」


「んだテメェ」


「なんだ中坊じょねーかよ」


「なんだよ、中坊がこんなところになんか俺たちに用か?」


 岡崎と同じ制服を着た高校生が俺と高弥に向かってそういってくる。

 岡崎も騒ぎに気が付き俺の目を見る。


「お前……確か千咲の友達二人じゃないか?」


「へぇ……知ってるんですね先輩」


「当たり前だ、ボロを出さないように周囲の人間関係にも細心の注意を払っていたが……ここに来たってことは俺のことをいろいろ調べたってことか?」


「……まぁな」


 俺と岡崎は互いににらみ合った。

 そして岡崎は笑いながら俺にこういった。


「なんだ? 大事な女が俺に怪我されない前に救い出しにでもきたか? かっこいいねぇ~」


「まぁ、どうとってもらっても構わねーけどよ……こっちにもいろいろ証拠はそろってるんだ、これをネットにでも投稿したらお前は一貫の終わりだろうよ」


「なるほど、確かに一貫の終わりだな……じゃあなんでお前はそれをしないで馬鹿正直に俺の目の前に出てきた?」


 これには訳があった。

 確かに俺たちが握っている岡崎の情報をSNSやネットに上げて拡散することは簡単だ。

 しかし、そうした場合奴も自暴自棄になって、自分が持っている女の子たちの弱みをネットにばらまかないとも限らない。

 それはまずいと思い、俺と高弥はまず岡崎の握っている弱みを回収して処分することにした。


「まぁ、もう話は良いでしょ先輩……そろそろ痛い目見ましょうか」


「っん! な、なんだこいつ……雰囲気が……」


「まるで別人だ」


「おいおい、たかが中坊に何をビビってんだよ? お前ら……一斉にやれ!!」


 岡崎の声と共に十数人の不良たちが俺と高弥に向かってきた。


「ふん!」


「ぐぉ!!」


「な、なんだこのガキ!」


「つ、強い……」


「おい、この程度か!!」


「ぐあぁっ!」


 俺は十数人の不良を難なく一人一人一撃で倒していった。

 やがて最後の不良も倒れ、最後には岡崎が残った。


「へぇ……結構やるなぁ」


「まぁな……この状況でもアンタはまだ笑ってるんだな」


「あぁ、俺はお前にまだ負けたと思ってないからな」


「……」


 何かある、俺はその時そう思った。

 取り巻きの不良を全員を圧倒的な力でねじ伏せたというのに、岡崎は余裕の笑みを浮かべている。

 おそらくだが、岡崎にはまだ何か隠している手玉が存在する。

 それはきっとこの不良たちのような素人ではない、もっと手ごわい手練れだ。


「さっさと残ってる兵隊もだせ、俺は早く帰りたい」

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