第87話



 村谷が彼氏と付き合い始め、俺たちが放課後三人で過ごすことは少なくなった。

 だが、俺も高弥も村谷に彼氏が出来た事を祝福していた。

 そんなある日だった……。


「村谷今日もデートか?」


「うん! まぁね!!」


「上手くいってるみたいで良かったよ」


「いやぁ~私にはもったいないくらい良い人でさぁ~」


「まぁ、お前なんてこれを逃したら結婚出来ねーんだ、その彼氏大切にしろよ」


「どういう意味よ!」


 いつも通りの帰り道、俺たちはそんな話をしながら家に帰っていた。

 途中で村谷と別れ俺と高弥は二人になった。


「なんていうかあれだな、彼氏とか彼女が出来ると友達との時間って減っちまうのかね」


「なんだい? 村谷さんが取られて寂しいのかい?」


「そんなんじゃねーよ、ただなんか……お前にも彼女が出来たら俺は一人になっちまうのかなって思っただけだ……」


「なんだそんな心配かい? 安心しなよ僕は当分彼女なんて作る気はないから」


「なんでだよ、お前かなりモテるだろ?」


「あのねぇ……好きでもない人に告白されて、じゃあ付き合いますなんて流れにはならないだろ?」


「ま、まぁそうか……でもお前この前三年の美人で有名な先輩も振ったんだろ?」


「うん、好きじゃないし」


「あっさりしてんなぁお前……」


 二人でそんな話をしている時だった。

 俺と高弥が路地の近くを通ると数人の高校生が話をしているのが聞こえてきた。


「岡崎、今度の子はどうなんだよ? 中坊って聞いたけどガキじゃねーの?」


「あぁ? まぁガキだけど面が良いからな、それにもう少しでやれそうなんだよ」


「うわぁ中坊相手に手を出すとかえげつなぁ~」


「そういうなよ、俺が抱いたらお前らにも回してやるよ」


「マジかよ! それは楽しみだ!」


「おいおい、さっきまでえげつないとか言ってた奴がなんだよ」


 俺はピタッと足を止めた。

 確か……村谷の付き合っている男の名前も岡崎だったはず……。

 まさか……こいつが村谷の付き合ってる岡崎なのか?


「じゃあ、悪いけど俺これからデートだから」


「あいよー」


「またエロ画像楽しみにしてんぞー」


「おうよ」


 そう言って岡崎と呼ばれていた男は路地から俺たちの居る大通りに出てきた。

 爽やかそうな青年だった。

 ぱっと見はイケメンで普通に歩いていればアイドルか俳優かと思ってしまうレベルだ。

 それなのにあいつの目はひどく濁っていた。


「なぁ平斗……」


「あぁ……少し調べる必要がありそうだ」


 俺と高弥はこの日を境に村谷恋人について探り始めた。

 名前は岡崎大賀(おかざき たいが)高校二年生の男子で親はあの岡崎重工の社長らしい。

 学校では優等生でみんなに分け隔てなく接する良い人で通っているらしい。

 勉強もスポーツも完璧な男だが一つだけ黒噂があった。


「なるほど、一部の不良と一緒に居るとこを目撃されてるのか」


「しかもその不良の達が悪い……ここらでもかなり名前の通ったやつらだ」


「たく……村谷の野郎よりにもよって……」


 俺の自宅で集めた情報を話し合いながら、俺は眉を潜める。

 

「んで、どうするの?」


「決まってんだろ? あのバカの目を覚ましてやんだよ」


「まぁ、そう言うと思ったけど……厄介だよ」


「だろうな」


「相手は人望もあって頭も切れる、平斗が別れろなんて言っても聞かないだろうね」


「だろうな、ただでさえ初めて出来た彼氏で喜んでるし」


「ここはあえて彼女じゃなくて、岡崎を脅して引きはがす方が簡単じゃないか?」


「だが、そのためには何か岡崎の弱みを握らないといけない……不良との繋がりくらいじゃダメだ……もっと何か」


「そう言うと思って、調べたけど……聞くかい?」


「なんだよそんな真剣な表情で」


「いや、正直これは僕らが首を出す問題じゃないと思ってね……警察に通報するレベルのヤバイことが分かった」


「はぁ? そんなやばいことが分かったのか?」

 

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