第86話



 テスト勉強を一週間みっちり行い、ついに本番を迎えた。

 俺たちの学校はテストを三日間に分けて行う。

 テスト期間中は部活も委員会活動も禁止なので生徒は基本的にテストが終わったら真っ直ぐ帰宅する。

 俺も一人で真っ直ぐ家に帰宅する途中だったのだが、俺は帰る途中で大学生数人に囲まれていた。


「なんでこうなるんだ……」


「お前が島並とか言うガキか?」


「なんだよ、ただのガキじゃねーか、なんでこんな奴の為に金を出す奴がいるんだ?」


「知らねーよ、でもこっちは金さえ貰えりゃなんでも良いだろ!」


「そうだなぁ!!」


 かけ声と共に大学生数人は俺に襲いかかってきた。

 恐らくだが、この前の大島の先輩繋がりの奴らなのだろう。


「ほい」


「あぎゃ!」


「おら!」


「うぐっ!」


「あいよ!」


「あがっ……」


 さて、終わった事だしさっさと帰ろう。

 と思っていた俺だったのだが、俺はこの大学生の言葉が少し気になった。

 金でさえ貰えりゃなんでも言いとかいってたけど、こいつら誰かかから雇われたのか? だけど……なんで俺なんかの為に?


「おい」


「あ……あぁ………」


「誰に雇われた?」


「う……うぅ……く、詳しくは分からない……確か……他の奴からは……岡崎と……」


「岡崎!?」


 俺はその岡崎と言う名前に心当たりがあった。

 まさかとは思うが、あの岡崎か?

 だとすると………あいつが俺に復讐しようとしてるのか?


「……そうか、じゃあもし岡崎に会ったら言っておいてくれ……変な真似したら今度は容赦しないってな」


 俺はそう言って、その場を後にした。

 岡崎……その名前を聞いた瞬間、俺は自分の中から怒りが沸いてくるのを感じた。

 そして同時にとある人物の事が心配になり始めていた。


「村谷……」


 もし、俺の知っている岡崎なら村谷の事も放ってはおかないだろう。

 それに……こんな雑魚を俺に差し向けて着たってことは警告のつもりだろうな……。

 よほど自信があるのか?


「ちゃんと始末を付けないとな……」


 俺は岡崎の事を考えながら、家に帰って行った。

 テストよりも厄介な問題が生まれてしまった。





「高弥、少し聞きたいことがあるんだが」


「ん? どうした?」


 翌日、テストを終えた俺は高弥の元に向かった。

 

「いや……少し聞きたい事があってな……あのさ……村谷って……」


「え?」


 やっぱりこうなるか……。

 俺が村谷の名前を出すと、高弥はあからさまに嫌な顔をした。

 きっと俺にはもう村谷と関わって欲しくないんだろうな……。


「いや……あいつの行った高校とか覚えてないかと思ってな……」


「なんでそんな事を聞くんだい?」


「いや……ちょ、ちょっと気になってな……あは、あははは………」


「………」


「あははは………悪かったよ、そんな目で見るな」


 こいつには誤魔化しも何も通用しないか……。


「それで、何があったんだい?」


「まぁ、教室では少し話しずらい……歩きながら話すよ」


「分かったよ」


 俺は高弥と話しながら、昨日の大学生の事を話した。


「岡崎? あのクズ……まだ平斗を……」


「あぁ、それで少し村谷が心配になってな」


「あんな女、少し痛い目を見ないと分からないんだよ……放って置けば良い」


「そうも行かないだろ? それに……俺が何の為に泥を被ったのか……お前は知ってるだろ?」


「君……まだ彼女を………」


「………そんなんじゃねーよ」


 俺はそう言いながら、高弥と村谷の通っている高校の近くにやってきた。


「あの高校か?」


「あぁ、まぁ理由も理由だし、仕方なく場所を教えるけど……あんまり無茶はしないでくれよ」


「あぁ、分かってるよ」


 村谷、そして岡崎……あの二人がまた出会ってしまったらまたあんなことに……。

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