第63話

 初白とそんな話をした後、俺は自分の教室に戻っていた。

 まぁ、戻るのは全然良いのだが……最近迷惑なストーカー二人に付きまとわれている、そしてそのストーカーは……。

 

「おはようございます兄貴!」


「おはようございます島並さん」


 ご存じの通り、大島と悟である。

 あの一件以来、学校では毎日こいつらが付きまとって来る。

 正直うざい。

 それに同じクラスの奴らから、また変な噂を立てられるつつあった。

 

「あぁ、おはよ……お前らそろそろホームルームだから帰れ」


「「はい!!」」


 やけに聞き分けも良い。

 そしてそれをニヤニヤしながら傍観する高弥。

 何をニヤニヤしてんだあいつは……。


「また来てたね、子分二人」


「だから子分じゃねーって言ってるだろ……なんなんだあいつら……」


「まぁ、平斗の事を認めたって事だろ? 道場にも入会したんだろ?」


「あぁ、来週から本格的に来るらしい……正直面倒だよ」


「可愛い後輩じゃないか、望み通り強くしてあげなよ」


「俺は教えるのは下手なんだよ……」


 高弥にそんな事を話しながら、俺は一限目の準備を始める。

 そういえばそろそろ試験の時期だし、授業は真面目に受けておこう。

 自分で言うのもなんだが、俺は意外と勉強が出来る。

 まぁ、ちゃんと勉強して両親を不安にさせたくないという理由もあるが。一番の目的は大学受験の時に苦労しないようにだ。

 高弥も成績は良い、正直俺よりも良い。

 何しろ学年一位の実力まで持っている。

 まぁ、それがモテる理由の一つでもある。


「再来週からテストか……平斗勉強はしてるの?」


「まぁ、ぼちぼち、最近は道場の手伝いもあるからあんまりしてないけど」


「そっか、大丈夫? 最近忙しいんだろ?」


「まぁ、テスト期間中は道場の手伝いは免除してもらうことになってるからな……」


 昼休み、俺は昼食を食べながら高弥とテストの話をしていた。

 まぁ、正直俺と高弥は問題はない、高校に入ってから赤点を取ったことがないからだ。

 だが、あのアホはどうなのだろうか?

 なんか見るからに馬鹿っぽいしなぁ……。

 ん、そうだ!


「という訳で、お前は高弥から勉強を教われ」


「いきなり廊下でなんですか……」


 放課後、俺は初白の元にやってきてそう言っていた。

 

「いきなりなんですか、勉強を教われって」


「再来週はテストだろ? それにお前どうせ馬鹿だろ?」


「馬鹿とはなんですか! 馬鹿とは!!」


「じゃあ、入って最初のテストはどうだった?」


「………」


「目を反らすなぁー」


 初白は目を反らしてモジモジしながら話始める。


「ちょ、ちょっとだけ……ちょっとだけ赤点はありましたけど、大丈夫ですよ!」


「赤点あんじゃねーかよ、ちなみに何教科?」


「……さ、三教科……」


「半分じゃねーか馬鹿」


「馬鹿じゃないです!!」


「お前、良くさっきの話から言えたな」


 予想通りというか、なんというか……。

 まぁ、正直俺の考えたこの作戦は理に叶っているかもしれない。


「丁度良い、それなら高弥から習うと良い、高弥には俺から話をつけておこう」


「な、なるほど……勉強も教われ親密度も高まる!」


「告白する前に、もう少し親密になっておけよ」


「せ、先輩にしてはなかなか良い案ですね。あ、でも私勉強に集中できないかも……」


「何考えてんだよアホ」


 初白は何を考えているのか、頬を赤く染めて体をくねくね動かし始めた。


「まぁ、そう言うことだじゃあ俺は帰る」


「はい、先輩ありがとうございます!」


 俺がそう言って初白の元を後にしようとすると、教室の方から一年の女子生徒数人が初白を読んだ。

 あれは……確か悟の彼女……確か香奈だったか?

 どうやら無事に仲直り出来たようだ。

 俺に気が付いた香奈は俺の顔を見て頭を下げる。

 心配したが怪我もなさそうだし、仲良くやれてるようでよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る