第62話
稽古は午後まで続いた。
午後とは行っても三時で稽古は終わり、俺はシャワーを浴びて着替えをしていた。
「はぁ……まったくなんでこう面倒な事に……」
俺はそんな事を考えながら、着替えを済ませて道場の掃除に向かう。
すると、道場には城崎さんが残っていた。
着替えを終えているところを見ると、どうやら誰かを待っているようだ。
「城崎さん、どうしたの? 誰か待ってるの?」
「はい……あの……島並さんにお話があって……」
「俺に? 一体何かな?」
「あの……えっと…・・・島並さんはなんでそんなに強くなったんですか?」
「え? どうして?」
「いえ、今日も見て思いましたけど……なんでそんなに強くなったのかなって……理由がないと人って強くならないと思って……」
「………まぁ、父さんが道場をしてたから流れでかな……そんなに深い意味なんてないよ」
「でも……それなら、あそこまで強くならないと思うんですけど……なんていうかその……島並さんの強さは……異常っていうか……」
「異常ね……まぁ確かにそうだよな……」
「あ! いや、違いますよ! 別にその気味が悪いとかじゃなくてその……何か過去にあったのかと思って……」
過去に何かあったか……。
この子はもしかしたら、俺の噂を知らないんだろうな。
ま、あの噂は俺が武道をやめる切っ掛けの話しだし、俺が武道を始める切っ掛けの話しじゃないんだけどな……。
「別に無いよ、ほら早く帰って休日を満喫しな、俺も掃除したらベッドで昼寝するから」
「はい……すいません、変な事を聞いて……」
「いや、良いよ。気を付けて帰りな」
俺が笑顔でそう言うと、城崎はお辞儀をして道場を後にしていった。
俺は掃除機を掛けながら、城崎の質問を思い出す。
「何の為にか……言っても分かってくれないだろうな」
俺はそんな事を考えながら、掃除機の電源を切り、掃除機を片付け始める。
*
「と言うわけで! 先輩! 協力して下さい!」
「いきなりだな、何がと言う訳なんだよ」
平日、俺が学校に来ると昇降口で出待ちをしていた初白に捕まり、俺は学校の屋上に来ていた。
「まぁ、聞いて下さいよ! 色々ありましたけど、私と真木先輩の関係ってかなり良いところまで来てると思うんです!」
「まぁ……そうだな?」
「なんで疑問形なんですか……」
「気にするな、それで何を手伝えば良いんだ?」
「結構あっさり手伝ってくれるんですね」
「まぁ、俺からしたらさっさとくっついてもらって、お前の手伝いをもうしたくないからな」
「なるほど……それじゃあ、今回なんですけど!」
初白はそう言いながら、今回の作戦を説明し始めた。
「私は今回で真木先輩に告白しようと思っています!」
「へぇ……良いんじゃ無い? すれば……」
「手伝うと言った割には適当ですね」
「まぁ、面倒なことに代わりは無いからな……それでどうやって告白するんだ?」
「それはもちろん! 放課後の屋上に先輩を呼び出して……」
「ベタだな」
「ベタなのが一番です!」
「高弥はどうやって呼び出すんだ?」
「それは手紙とかメッセージとかで!」
「まぁ、確かに告白する流れとしては一般的だと思うが……正直い手伝う要素がどこにあるのかわからんぞ? 呼び出して告白するだけなら俺は必要無いだろ?」
「ありますよ! 私を慰める役です!」
「………いる? その役?」
「要りますよ! やけ食いに付き合ってもらうんですから!」
「ちなみにそのやけ食いの代金は?」
「先輩にお願いしたいです」
「自分で出せよ!」
「まぁ、私が振られなければ出す必要ありませんから!」
「じゃあ、多分90%の確率で俺の財布が軽くなるな」
「成功しますよ!!」
まぁ、確かにいつもなら100%振られると思うが、今回ばかりはもしかしてがあるかもしれない。
高弥もなんか初城が気になるみたいだし、ワンちゃんあるかもな。
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