第64話

 初白に俺の考えた策を伝えた後、俺はあの二人に見つからないように急いで昇降口に向かっていた。

 

「……よし……居ないな……」


 俺は大島と悟が居ない事を確認し、家に帰ろうとした。

 しかし、その時。


「兄貴!」


「島並さん!」


「げっ……」


 昇降口の影から大島と悟の二人が顔を出した。

 なんでこいつら居るんだよ……。

 

「お前ら……もう俺に付きまとうな、正直うざいぞ」


「いえ! 弟分として兄貴の側に居るのは当然です!」


「いつお前らを弟分にした……」


「島並さんに迷惑は掛けません! 側に置いてください!」


「現在進行形で迷惑だっての……はぁ……」


 まったく、こいつらの態度といったら180度変わったな……。

 これなら、まだ悪態をついてきたあの頃の方が付きまとってこなかったから楽だったわ……。


「悪いが俺は今日はもう帰るんだ、お前らももう帰れ」


「「ではご一緒に!」」


「なんでそうなるんだよ……」


 マジでこいつらなんとかしてくれ……。

 言っても聞かない二人を放って、俺はそのまま自分の家に向かって歩き始めた。

 もちろん大島と悟は後ろから付いてきた。


「そう言えば、お前ら勉強はしてるのか?」


「え? あぁ、そう言えば再来週からテストっすね」


「まぁ、再来週からなのでまだ焦る必要は……」


「ちなみにお前らの前回の点数は?」


「「………」」


「二人して顔そらしてんじゃねーよ」


 まぁ、なんとなく予想は出来るがな……。

 てか、もしかしたら初白よりこいつらのテストの方がヤバいんじゃねーのか?


「赤点何教科あるんだ?」


「そ、そこまで無いっすよ……数学だけです」


「お、俺は……歴史が……」


「え? 二人とも一教科だけ?」


「まぁ、そうっすね……他も結構ギリギリっすけど……」


「俺もそんな感じで……」


 意外だな、全教科赤点って言われた方がまだ納得出来るが、それはこいつらに失礼か……。

 てか、あのアホはこの二人よりも頭悪いのか?

 

「まぁ、勉強はしっかりしておかないと後で後悔するぞ、教科も増えるからな」


「ま、まぁ……そうなんっすけど」


「なにぶん頭を使うのは苦手でして……」


「だろうな」


 どっちかって言うと二人とも直感で行動しそうな感じの奴らだしな。

 

「ちなみに兄貴はどうなんすか?」


「え? あぁ……まぁ赤点は取らねーよ」


「流石島並さん! 勉強も出来るんっすね!」


「おぉやめろ、その持ち上げ方は普通になんか恥ずかしい」


 こいつら完全に俺の子分気取りだな……。

 早く飽きて離れて行って欲しいのだが。

 そんな事を俺が考えていると、いつの間にか俺の家の道場に付いていた。


「お前らそう言えば来週からだろ? 道着届いてるからついでに持ってけ」


「本当ですか!」


「ありがとうございます!!」


 いつもなら家まで付いてくるなと言うこいつらを仕方なく連れてきた理由はこれだ。

 来週からうちの道場に入会する二人に道着を渡す為だ。

 まぁ、俺が学校に持っていても良いのだが、正直結構重いし面倒くさい。


「ちょっと、待ってろ今持ってくっから」


「「はいっす!」」


 俺は玄関先に二人を座らせ、道着を取りに道場の方に向かった。

 道場の扉を開けると今日は竹内さんが親父と組み手をしていた。

 

「おぉ平斗、帰ってきたのか」


「お! 平斗! お前今日俺の練習に付き合え!」


「嫌っすよ、それより父さん、来週から来る二人の道着はどこに置いたっけ?」


「あぁ、それならあそこだ、なんだ取りにきたのか?」


「まぁ、そんなところ、じゃあ俺はこれを二人に渡してくるから、二人は続きをどうぞ」


「あ、コラ平斗! 逃げるな!」


「いや、逃げてる訳じゃ無いっすよ……」


 俺はそう言って二人の元を後にした。

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