第59話

「あ、あの……この前は助けて頂いて……本当にありがとうございました」


「お、おう……」


 なんだこいつ、急に態度が変わったな……。

 一体何があったんだ?

 てか少しキモイな……。


「島並さんに言われて俺が付いてながら……情けない」


 あれ?

 こいつってこんなキャラだっけ?

 なんか随分腰が低くなったな……。


「いや、3対1じゃ仕方ないだろ、まぁ気にすんなって身を挺して自分を自分を守ってくれたって、初白も感謝してたぞ」


「いや、自分はただ壁になっただけですよ……」


「壁になって殴られるのも普通の奴には出来ねーよ、お前は良くやったよ」


「でも、貴方が来なかったら俺は……だから、島並先輩……貴方にお願いがあるんです!」


 なんでだろうか、すげー嫌な予感がする……。

 てか、貴方って……この前までお前って呼んでただろ。 


「俺はこの前の出来事で貴方を尊敬しました。貴方の強さや男らしさに惚れました! 兄貴と呼ばせて下さい!」


「ヤンキー漫画か」


 いや、なんで兄貴?

 どこに俺に惚れる要素があるんだよ!

 てか、まさかこいつ……付きまとって来たりしないよな?


「普通に嫌だわ、面倒だし……」


「そこをなんとか! 兄貴!」


「やめろ! なんか気持ち悪い! 兄貴分が欲しいなら他を当たれ、俺はこう見えて色々忙しいんだよ」


「あ、兄貴!!」


「いや、付いてくるなよ!」


「頼む! 兄貴みたいな男になりたいんだ!」


「それ、ろくな男にならねーからやめておけ。てかお前、俺の噂知ってるんだろ? そんな奴を兄貴分に選ぶなよ!」


「正直、何が本当なのかは分からない……だけど、俺は兄貴が噂の通りの男だとは思えないんだ!」


「それはお前の勘違いだ、俺はろくでもねぇ男だ」


「ろでもない男は何の利益も無しに人助けなんてやらないっす! お願いします! なんでもします! だから兄貴と!」


「良いから少し黙れ! 俺はもう帰る! 兄貴分は他を当たれ! 以上!!」


「あ! 待ってください兄貴!!」


「兄貴呼ぶな!!」


 俺は大島を無視して昇降口の方に歩いていった。

 一体なんだというんだ急に……昨日で出来事のどこに俺に惚れる要素があるんだよ……。

 俺がそんな事を考えながら昇降口で待っている高弥の元に戻ると、そこには高弥以外に男が三人居た。

 見た事があるその三人組は悟とその取り巻きだった。


「あ、来たみたいだよ」


 何か高弥と話ていたようで、俺が来た瞬間に会話をやめて全員俺の方を見た。

 ちなみに大島はずっと俺の後ろをついてきている。


「昨日は本当にありがとうございました……色々迷惑をかけた俺たちなんかを……先輩は助けてくれて……本当に感謝してます!」


「別にお前らを助けたわけじゃねーよ、あと悪いけど今日はもう帰りたいんだ……後ろの自称子分がうるせぇから……」


「兄貴! 頼んます!!」


「だから兄貴分は他を当たれっての!」


 昨日の事に関しての謝罪とお礼を言う悟に対して俺がそう言うと、後ろの大島はしつこく俺を兄貴と呼ばせて欲しいと頼み込んでくる。

 また面倒なことになってきたな……。


「おい悟! 兄貴はもう今日は帰るんだよ! こんなとこで引き留めんじゃねぇよ!」


「大島、それはお前もだ」


「はい、すいませんです!!」


「いや、良いからもうお前は帰れ……」


 なんか、さっそく子分っぽいことをし始めたな……。

 見てるだけの高弥は腹を抱えて笑ってるし……。


「大島、俺は今先輩と話てんだよ、お前の話なんて聞いてねぇ! それに兄貴ってどういうことだ! この人は俺の兄貴だ!」


「いや、お前のでもねぇよ」


「俺は昨日のアンタの強さや人間としての器のデカさに惚れました! 今までの失礼な態度は謝ります! だから俺を貴方の舎弟にしてください!」


「今度は舎弟かよ……」


 なんか知らんが急に後輩(男子)にモテ始めた俺であった。

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