第55話
「ま、待て! 話す! 話すから!」
「じゃあ、早く話せよ」
男は慌てた様子で話し始めた。
どうやらこの男とその仲間達は悟の先輩らしい。
悟はそんな先輩達からクラスでも一番可愛いと評判の初白を連れてくるように指示されたが、連れてくる事が出来なかった。
痺れを切らしたそいつらは、悟の彼女の香奈と友人の女子生徒二人を人質に取ったらしい。
「しょうもねーな、このロリコン共」
「な、なんだと!」
「あ?」
「ひっ!」
なんともイライラする話しだ。
後輩達にこいつらは何を命令してるんだか……どいつもこいつもアホばっかだな……。
てか、初白のアホはいつまで寝てんだよ……。
「平斗」
「ん? あぁ高弥か……いままで何してたんだよ?」
「ごめん、ごめん、三年の先輩に捕まって……」
「またかよ……まぁ、とりあえずこの場はどうにかなったから良いけど……」
「それで、何があったの?」
「あぁ……実はな……」
俺は後からやってきた高弥にこれまでの出来事を説明した。
「なるほど……それで初白さんは眠ってるわけか……」
「あぁ、アホ面でな」
「いや、可愛い寝顔じゃないか」
「って、ことで初白の事頼んでも良いか?」
「あぁ、どうせ行くんだろ?」
「まぁ、土下座までされちまったからな……お前は初白と……えっと……そこの吉武宗君を頼む」
「おい! それ俺の事か! 最早原型留めてねぇぞ! 大島だって何度言えば……」
「吉武宗君は怪我してるから、その手当も頼む」
「あぁ、分かった。吉武宗君は僕に任せて、平斗は早く人質になってる女の子達を」
「いや、アンタもかよ! 俺の名前、吉武宗で決定!?」
ワーワーと色々言ってくる吉武宗君。
これだけ元気なら心配する必要はあまり無いかもしれないな。
「おい、お前らも来い」
「え……」
「お、俺らも?」
俺は悟と悟の取り巻き二人に向かってそう言った。
取り巻きの二人は俺たちも行くの?
的な顔をしていた。
「人質がどこに居るかが分からないからな、案内しろ」
「わ……わかった……」
悟はそう言いながら、フラフラしながら立ち上がり、案内を始めた。
「さ、悟!」
「お前大丈夫か?」
取り巻き二人は悟を両サイドから支える。
「あんま、ゆっくりも出来ねーぞ、お前の彼女がどんな目にあうかわかんねーからな」
「わ、分かってる……」
俺と悟達は急いでその場所に向かった。
町外れにある少し大きめの廃寺、そこに悟達の先輩は居ると言う。
「ここか?」
「あぁ……でも、アンタがいくら強くても……先輩はボクシングで結構有名な……」
「そうか……まぁ、どうでも良いな」
「ど、どうでも良いって……相手は大会なんかでも優勝したりしてるし、それに大学生だぞ!」
「あぁ……まぁでも、その力を馬鹿みたいな事にしか使えないクズだろ? そんな奴はただの……小物だ」
俺はそう言いながら、廃寺の扉を開ける。
中には男が8人と見たことのある女子高生が三人居た。
女子高生を男が囲んでいる構図で、女子高生の来ていた制服は着崩れていた。
戸を開けた瞬間、中に居た奴らは全員こちらに目を向ける。
「なんだお前ら?」
「あ、悟! 連れてきたのか?」
「なんだ、このその小僧は?」
ニヤニヤ笑いながら、大学生は女子高生の体に触ろうとする。
女子高生三人は目に涙を浮かべていた。
俺はその光景を見た瞬間、昔の事を思い出した。
そして、俺は大学生達向かって大声で叫ぶ。
「ねぇねぇ! ロリコン大学の馬鹿なお兄さん達ぃ~!」
「あぁ?」
「んだと、このガキ?」
「ガキ? 俺よりもその子達は年下なんですけど? そのガキに手を出そうとしてるお兄さん達は間違い無くロリコンでしょ?」
「悟、この失礼な奴はなんだ?」
「てか、お前……ちゃんと女連れてきたのか?」
「せ、先輩達こそ! 連れてくるまで香奈には手を出さないって!」
「あ? そんな事言ったけぇ~?」
「ふ……ふざけんな! おい! 香奈を離せ!」
「あ、おい悟!!」
悟はそう言いながら、男達に殴り掛かっていった。
しかし、既に体力も限界に来ていた悟るはそのまま返り打ちに合ってしまった。
「馬鹿じゃねぇのかお前? そんなボロボロで俺たち相手に勝てると思ったのか?」
「うぐっ!」
「悟!!」
殴られ、蹴られる悟に捕まっている香奈は声を上げる。
「まぁ、お前じゃ万全な状態でも俺たちには勝てねぇ~よ、クソ雑魚だもんな、お前~」
そう言って、男が悟るに殴り掛かった瞬間、俺はその間に割って入って、その拳を止めた。
「あ? なんだお前?」
「おい、ゲス野郎……一つだけ言っておくぞ……大事な女の子の為に自分を犠牲にして、やりたくもねぇ、汚ぇ事でも、なんでもしようとする奴をクソ雑魚なんて言わねーんだよ………男って言うんだよ」
「ぐぉっ!!」
俺はそう言い終えると、悟を殴ろうとした男の腹部を殴った。
男はそのまま倒れて動かなかった。
「て、てめぇ!」
「タダで済むと思うなよ!!」
「あっそ」
「がはっ!」
「ぶはっ……」
俺は近くにいた二人の大学生も殴り飛ばし、奥に居るボスのような感じの男の元に歩いて行く。
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