第53話
*
まぁ、何となく予想はしていたが……まさか本当にこんな事になるなんてな……。
俺は地面に這いつくばる大島の頭に手を置く。
「無理させて悪かったな……後は任せろ」
「……情けない………俺は……」
大島はそう言いながら、悔し涙を流していた。
俺はそんな大島の頭を軽く叩いて言う。
「アホ、男が泣くな、みっともない。良いからここで少し見てろ」
まぁ、好きな子にかっこ悪い姿を見せたんだ、プライドの高い奴だったら泣きたくもなるわな……。
「くそぉ………」
「……安心しろ、初白がどう思ってるかなんて俺は知らねーけど……お前は立派な男だったよ」
「……フォローなんていらねぇよ……」
「そうかよ……まぁ、とりあえずバトンタッチってことで」
俺はそう言いながら、悟の前に立つ。
「さて……お前ら、俺が忠告したのに……覚悟は出来てるよな?」
「ひっ! さ、悟! だから俺はヤバイって言ったんだ!」
「あいつ、メチャクチャ強いんだぞ! ど、どうするんだよ!」
「や、やるしかねぇだろ!! やらないと……あいつらがどうなるか分からないんだぞ!」
あいつら?
どう言う事だ?
あいつらももしかして何か訳ありか?
もしかしたら、話し合いで解決出来るか?
なんてことを考えていた俺だが、悟の取り巻きの一人が俺の両腕を背後から拘束してきた。
「い、今だ! いくらこいつでも体の自由がきかなきゃ大した事ねぇ!」
「よし! 良いぞ! そのまま抑えておけ!」
そう言って悟は俺に向かって殴り掛かってきた。
しかし、この程度で動けないと思っているのは考えが甘い。
俺は力尽くで拘束を解き、悟の拳を避ける。
「よっと」
「え?」
「ぶへっ!」
悟の拳は俺を拘束していた取り巻きに当たり、取り巻きはその場にうずくまってしまった。
「おいおい、仲間割れか? 仲良くしろよ」
「くっ……てめぇ……」
「何でも良いけど、そろそろやめにしないか? お前らもなんか訳があってこんな無茶をしたんだろ?」
「うるせぇ!! やらなきゃ……やらなきゃ……香奈が!」
「………おい、もうやめろよ……何があった
? いくらなんでもイタズラでこんな事する奴らじゃないだろ?」
「うるせぇ!! 良いから邪魔をするなぁぁぁ!!」
「……アホ」
何があったのかはわからないが、悟はなんだか焦っている様子だった。
悟は焦った様子のまま俺に再び殴り掛かってきた。
俺はそんな悟の足を引っかけ、悟を転ばせる。
「うおっ!」
悟は顔面から地面に倒れた。
「少し落ち着け、何があった?」
「うっ……お、俺がやらなきゃいけねぇんだ……」
「おいおい……お前まで泣き出すなよ……」
今年の一年は大口を叩く割には、泣き虫が多いようだ。
俺は倒れた悟の近くに行き、話し掛けた。
「何があった?」
「………アンタには関係ねぇだろ!」
「まぁ、そうだな……だが、お前らは俺の大事な後輩の……えっと……鮫島君を……」
「大島だっ! 大事なら名前を覚えろ!!」
俺がそう言うと話しが聞こえたのか、大島が俺に向かってそう叫んできた。
「あぁ、そうそう大島君だ! 大島をボコった……訳を聞く位は普通だと思うが?」
「………アンタに話したって解決なんてしねぇよ……」
「なら、言うだけ言ってみろ……」
「………ダメだ……言えねぇ……」
「そうか……それは、あそこに居るやつと関係があるのか?」
俺はそう言って、電柱の影からこちらを見ている奴を指さした。
大島が悟達にやられている時から居たが、俺以外は誰も気がついて居なかった。
恐らく悟はあいつに監視されているのだろう。
電柱に居た影は俺が指さすと、こちらの方に歩いてきた。
やってきたのは大学生の男だった。
「あらら、見つかっちゃった? 上手く隠れてたんだけど……君やるねぇー」
色黒で金髪、いかにもチャラそうな感じの男だった。
正直整理的に受け付けない。
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