第52話
*
昼休み、俺は高弥と一緒に昼飯を食べていた。
「それで初白さんのことはどう思う?」
「どうって?」
「もう分かってるんだろ? あの様子だと、初白さんはあんまりクラス内の女子から良く思われてない」
「まぁ、当たり前だろうな」
あんな性格だし。
猫被ってれば敵だって増えるだろうに。
「じゃあ、なんで助けようとするんだい?」
「別に助けようなんてしてねーよ」
「ふーん……」
俺がそう言うと、高弥はニヤニヤしながら俺の方を見てくる。
「なんだよ」
「別に……そう言うわりには護衛を付けたみたいだね」
「……見てたのか?」
「まぁね……でも大島君だけで大丈夫かい?」
「何となくだけど、あいつは惚れた相手の為ならなんでも出来る人間だと思う、そう言う奴は強い」
「……でも、数が多かったらヤバイかもよ」
「そういう時は俺が手を貸すさ」
俺は高弥にそう言い、弁当のおかずを口に運ぶ。
本当なら何もない方が良いのだが、悟のあの感じは何かが変だった。
あれだけ圧倒的な力の差を見せたのに、あんなに強気で来るのはなんでだ?
「もしかしたら、今日の放課後辺りに嵐が来るかもしれないな……」
「え? こんなに良い天気なのに?」
「比喩表現だよ、暇だったら初白を気に掛けてやってくれ、俺は大島の方に行く」
「あぁ、分かったよ」
この時の俺は、まさか本当に今日、事が起こるとは思っても居なかった。
*
なんでだろう……。
今日はやけに誰かに見られて居る気がする……。
私がそう感じたのは、今日の朝からだった。 やけに誰かから見られると思ったら、同じクラスの大島からの視線だった。
なんで私の事をそんなに凝視するのか、今日に不思議だったし、若干気持ち悪かったりもした。
しかし、そんな彼の行動に今なら納得がいく。
彼は私の事を別に変な目で見ていた訳では無い、彼は私を守ろうとしてくれていたのだ……。
「はぁ……はぁ……」
「大島ぁ! お前はなんで、毎回毎回……じゃますんじゃねぇ!!」
「おうふっ!!」
「大島君!」
学校から歩いて十分ほどの空き地、そこで私が目にしている光景は、大島が私を助けようと同じクラスの男子三人を相手に奮闘している姿だった。
なんでこんな事になったのか、それは一時間ほど前に遡る。
いつも通り、私は家に帰ろうと学校を後にし、一人で家に帰ろうとしていた。
しかし、そんな私の前に同じクラスの男子三人が現れ、私をどこかに無理矢理連れて行こうとした。
そんな私をどこかで見ていたのか、大島は私と男子の間に割って入り、なんとか私を逃がすために三人相手に奮闘しているが、三対一では流石に分が悪く、大島はどんどんボロボロになっていた。
「おめぇら……初白さんいじめて何が楽しいんだよ! この人が何かしたのか!」
「うるせぇな! お前には関係ねぇだろ!!」
「うぐっ……」
大島の腹に蹴りが入れられる。
大島はその場に倒れ込み、もう動けそうにない。
「おい、さっさと初白にアレを嗅がせて眠らせろ!」
「わ、わかった」
「だ、大丈夫なんだよな?」
「やるしかねぇだろ! じゃないと……」
そんな話しをしながら、男子三人は再び私の方に近づいてきた。
「こ、来ないでよ!」
「お、おい! 大人しくしろよ!」
「いや! 触らないで!」
男子二人が私の腕を押さえ、ハンカチに薬品のような物を染みこませて、私の口元に当てた。
「うっ……な、なに……これ……」
段々意識が薄くなっていく。
大島は男子を止めようと、地面に這いつくばりながら私に手を伸ばしてくる。
気持ち悪いなんて言って本当にごめん……。 私がそんな事を思っていると、そんな大島の側に誰かが駆け寄り頭を撫でた。
誰だろう?
一体誰が来たのだろうか?
私の意識はそこで切れた。
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