後輩の危機と俺のやり方
第51話
僕が初白さんを送ったのには二つの訳があった。
一つは初白さんが一人で帰るのが心配だったから、そしてもう一つは、何故初白さんが狙われていたのかを調べるためだった。
まぁ、僕が提案した訳では無く、平斗が僕に頼んできたのだ。
『あいつの事だ、お前に迷惑を掛けまいと何でもないって言ったんだろ?』
「うん、でも完全に目が泳いでたからね」
『あのアホ……まぁ、とりあえず分かったよ、ありがとう』
「また、何かする気かい?」
『……別に……何も無かったら何もしねーよ』
「また、噂されるよ?」
『今更噂の一個や二個増えてもな』
「まったく……君は……まぁでも……平斗のそう言うところが良いんだけどね」
『ありがとよ、じゃあまた明日学校でな』
「うん、じゃあね」
僕はそう言って、電話を切った。
平斗は恐らく初白さんが心配なのだろう。
もしかしたら自分と一緒に居ることによって、クラスで上手くいっていないのでは無いかと心配なのだろう。
だから僕にこんな事をお願いしたんだろう。
「まったく……お人好しは相変わらずだな……」
僕はそう呟きながら、自宅に帰宅した。
*
月曜日、学校についた俺は一年生のフロアに来ていた。
「えっと……デカいからすぐ見つかると思ったんだがなぁ……」
とある人物に用があり、俺は一年生のクラスを覗いてその人物を探していたのだが、なかなか見つからない。
「まったく……一体どこに行ったんだ?」
「おい」
「ん? おぉ! いたいた! お前を探してたんだよ、えっと……小島?」
「大島だよ! どっかのお笑い芸人みたいなことさせんな!!」
そう、俺が探していたのは初白のクラスの大島だ。
「おいおい、どこに行ってたんだよ、中島」
「だから大島だって言ってんだよ!!」
「まぁ、細かい事は気にするなって」
「細かくねーんだよ! なんの用だよ……朝っぱらから」
「いやぁ、たまには先輩らしく後輩の恋愛の手伝いをしてやろうと思ってな」
「恐ろしく嫌な予感しかしないんだが……」
「おいおい、折角協力してやろうって先輩に対してそれは無いだろ~」
「アンタを先輩と思った事は無い!」
「まぁまぁ、良いから聞けって」
俺は大島を階段下に連れてきて、話しを始めた。
「お前のクラスの悟とか言う男が居るだろ? 数日間で良い、初白に近づかないか見ておけ」
「なんで俺がアンタの指示を受けなきゃ行けないだよ……」
「まぁまぁ、良いから話しを聞けって! 良いか? あの悟って男が初白にもし襲いかかるなんて事があった時、お前がもし側に居れば、すぐに助けに入れるだろ?」
「悟? あの野郎……まだ初白さんにちょっかい出してんのか……」
「そうそう! 心配だろ? じゃあ頼んだぞぉ~!」
「あ、おい! たく……」
俺はそう言って、大島の元を離れた。
これで初白に何かあっても大島がなんとかするだろう。
まぁ、悟の反応を見るに大島も結構力が有るみたいだし、大丈夫だろう。
「さて……俺は俺で初白に忠告でもしにいくか……」
俺は続いて初白自身にも悟に注意するように言いに行こうとしていると、目の前から悟がいつものメンバーと共にやってきた。
「よっ!」
「げっ……」
「お、お前……」
「なんだよ、おまえら人の顔見た途端に慌て始めて……安心しろ、お前らが何もしない限り、俺も何もしない」
「………くっ……」
「まぁ、これからは仲良くしようじゃないか」
俺がそう言いながら、悟に手を差し出す。
しかし、悟は悔しそうな顔で俺の手を弾き飛ばした。
「良い気になるなよ……今度は必ず……」
「……残念だな……」
悟は俺にそう言うと、そのまま自分の教室に戻っていった。
「あんまり、喧嘩事は起こしたくないんだがな……」
俺はそう言いながら、自分の教室に戻った。
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