第46話
*
「んで、なんでお前がここに居るの?」
「それはこっちの台詞なんですけど」
準備をして待ち合わせの駅前に行くと、そこに居たのは高弥では無かった。
駅前に居たのは、普段着の初白だった。
俺の姿を見るなり、冷めたような視線を俺に向けてきた。
こいつは何も言わなくても失礼いだな……
。
「なんでお前がいるんだよ、俺は高弥に誘われてここに来たんだが?」
「私も真木先輩に呼ばれたんですけど……なんで先輩が居るんですか? 私の私服が見たいんですか?」
「いや、正直まったく興味無い」
「なんですかその言い草! ちゃんと可愛いって言って下さいよ!」
「あぁ、はいはい、可愛い可愛い」
「そんな思っても無い事を言われてもうれしくありません!」
「どうしろってんだよ」
時間になっても高弥は来ず、代わりに居るのはこのアホだけだった。
まったく、あいつは一体何をしてるんだ?
俺はスマホを取り出し、高弥に電話する。
「おい、何やってんだよ?」
『あぁ、ごめんごめん、僕ちょっと行けなくなっちゃってさぁ~』
「おい、いきなりそれはねぇだろ!」
『ごめんごめん、初白さんも呼んじゃったから、僕抜きでどこかに行ってきなよ』
「ふざけんな、なんで俺がこのアホと」
「聞こえてますよ先輩? 社会的に死にたいんですか?」
俺の返答が気にくわなかったのか、初白は眉間にシワを寄せながら俺にそう言ってくる。
『まぁ、そう言うことだからじゃぁ!』
「あ、おい! ……切りやがった」
「真木先輩なんて言ってました?」
「今日は来れねぇってよ」
「え! じゃあ私は何の為に勝負下着を着て着たんですか!!」
「要らない情報を勝手に押しつけるな」
「はぁ……先輩来ないのかぁ……」
「俺も先輩なんだが?」
「はぁ……イケメンな方の先輩来ないのかぁ……」
「喧嘩売ってるのか?」
もうこいつの失礼さにも慣れてきたな。
しかし、どうしよう。
休日までこのアホと一緒に居る気は俺には無いぞ。
それにこのアホだって俺と一緒に居る気なんてさらさら……。
「はぁ……じゃあ二人でどこか行きますか?」
「は? なんでそうなる」
「だって、折角お洒落しちゃったし、このまま帰るのもなんか嫌なんで」
「あのなぁ、俺とお前で一体どこに行くんだよ?」
「そうですねぇ………神社?」
「何故そうなる」
「いや、私の恋愛成就を願って」
「そこに俺と行って楽しいか?」
「まぁ、多少は?」
「多少ってなんだよ、じゃあお前行きたいとことかあるのか?」
「うーん、それなら……」
*
「少し強引だったかな?」
僕は駅前の看板の影から、初白さんと平斗を見ていた。
実は僕は昨日の夜、家に帰った後に色々考えた。
初白さんはきっと平斗ともっと仲良くなりたいはずだ。
二人の距離を近づける為には二人で出かけるのが一番だと考え、多少強引だったがこうして二人を外にだした。
僕も昨日は初白さんと出かけて、初白さんの事を知る事が出来たのだ、きっとあの二人も同じように互いを知ることが出来るはずだ。
「しかし、あの二人全然動かないなぁ……何してるんだろ?」
先程の電話から二人はまったく動こうとしない、何かを話している様子だが、ここからじゃ何を言ってるのかさっぱり分からない。
「まったく、ちゃんとエスコートしなきゃダメだろ平斗……」
僕がそんな事を思っていると、急に後ろから話し掛けられた。
話し掛けてきたのは、大学生くらいのお姉さんだった。
「あ、あの……」
「え? なにか?」
「あ、あの今一人ですか? 良かったら私たちとお茶でも!」
「あ、すみません少し忙しいので……」
「じゃ、じゃあ連絡先の交換だけでも!!」
「あ、いや……あの……」
こ、困ったなこのお姉さん結構しつこい……。
僕はお姉さんに逆ナンされてしまい、動けなくなってしまった。
その間に平斗と初白さんの二人はどこかに行ってしまった。
「あ、あの急いでますので!!」
僕はそう言って、その場から逃げるように立ち去った。
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