第42話
「あ、あの……初白さんは料理の時、味見とかするの?」
「味見をすると太るって聞くので……」
この料理の下手さを平斗が知ってて、「死ぬな」と送ったってことは、平斗も初白さんはの弁当を食べたってことだろうな。
平斗、彼女に今度言っておいてくれ、味見は料理において必要不可欠なものだと。
僕はなんとか弁当を食べ、弁当箱を初白さんに返す。
「あ、ありがとう美味しかったよ」
「そうですか、よかったぁ~」
なんか、砂糖菓子で出来た弁当を食べてる気分だった……。
でも、初白さんが折角作ってくれた物だし、美味しいと言って、これだけ嬉しそうな顔をする初白さんに不味いとは言いずらい。
「さて、じゃあ写真の続きでも取りに行こうかな」
「はい、今度は何を撮影するんですか?」
「そうだなぁ……たまには人でも撮ってみようかな」
「え? それって……」
「初白さん、モデルお願い出来る?」
たまには風景以外を撮るのも悪くないかもしれないな。
僕は初白さんにお願いし、被写体になってもらい、午後からは初白さんを撮っていた。
*
ど、どうしよう!
写真のモデルなんてやったことないし!
目とか瞑っちゃたらどうしよう~。
私は真木先輩から写真のモデルになる事をお願いされ、快く引き受けた。
でも、引き受けたまでは良かったけど、その写真が先輩のカメラの中に残ると考えた瞬間、私は少し焦ってきていた。
島並先輩に相談しようにも、先輩に連絡が付かない。
本当にあの先輩は!
この大変な時に何をしてるのよ!!
「じゃあ、まずベンチに座っててもらえる? 僕からポーズの指定はしないから、自然体でお願いね」
「は、はい……」
そう言われても緊張する。
真木先輩が私をカメラ越しにジーっと見ていると思うと、段々恥ずかしくなってきてしまう。
真木先輩はそんな私の事をカメラで撮影し始める。
あぁ~どうしよう……真木先輩がこのまま撮影していって「君の生まれたままの姿を撮影したい」とか言い出したらどうしよう!
一応念のために下着は勝負下着だけど!
私がそんな事を考えながら顔を赤く染めていると、真木先輩はカメラを覗くのをやめ、私の隣にやって来た。
「ほら、可愛く撮れてるよ」
「あ、ありがとうございます」
「やっぱり、女の子撮った方が写りが良い気がするなぁ……平斗は写真写りが悪くてね」
「そ、そうなんですか?」
写真は確かに可愛く撮れていた。
やっぱり、趣味でずっと写真を撮っているだけあって上手だなぁ……。
「女の子を撮ったのは久しぶりだよ……」
「え……前にも撮ったことあったんですか?」
「うん……中学の時にね……」
「へ、へぇ……と、友達とかですか?」
「………昔はね」
真木先輩は悲しそうな表情でそう言った。
なに!?
その意味深な感じ!
も、もしかして元カノとか!?
「まぁ、僕は基本的に風景写真しか撮影しないからね、この写真は家に帰ったら初白さんに送ってあげるよ」
「ありがとうございます! うれしいです!」
この後、私と先輩は少し写真を撮影して家に帰った。
色々話も出来たし、お弁当も美味しいって言ってもらえた。
これは大きな前進だ。
折角この喜びを島並先輩にも教えてあげようと思ったのに、まだ先輩に連絡が取れない。
「もう! 本当に何してるのよ!」
帰りの道すがら、私は思わず一人で先輩への不満を口に出してしまった。
*
「………アホ」
俺は母さんの手伝いをしようと、キッチンに向かおうとしていた。
その途中、今日は一切スマホを見ていないことに気が付き、俺が自分のスマホを確認すると、そこには初白からの大量のメッセージが来ていた。
「何かやらかしたかと思ったら、どうでも良い連絡ばっかり……なんか損したなぁ……心配して」
俺はため息を吐きながら、スマホを仕舞い、キッチンに向かおうとした。
しかし、丁度その時高弥から電話が掛かって来た。
「ん? もしもし?」
俺は高弥からの電話に出た。
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