第42話

「あ、あの……初白さんは料理の時、味見とかするの?」


「味見をすると太るって聞くので……」


 この料理の下手さを平斗が知ってて、「死ぬな」と送ったってことは、平斗も初白さんはの弁当を食べたってことだろうな。

 平斗、彼女に今度言っておいてくれ、味見は料理において必要不可欠なものだと。

 僕はなんとか弁当を食べ、弁当箱を初白さんに返す。


「あ、ありがとう美味しかったよ」


「そうですか、よかったぁ~」


 なんか、砂糖菓子で出来た弁当を食べてる気分だった……。

 でも、初白さんが折角作ってくれた物だし、美味しいと言って、これだけ嬉しそうな顔をする初白さんに不味いとは言いずらい。


「さて、じゃあ写真の続きでも取りに行こうかな」


「はい、今度は何を撮影するんですか?」


「そうだなぁ……たまには人でも撮ってみようかな」


「え? それって……」


「初白さん、モデルお願い出来る?」


 たまには風景以外を撮るのも悪くないかもしれないな。

 僕は初白さんにお願いし、被写体になってもらい、午後からは初白さんを撮っていた。





 ど、どうしよう!

 写真のモデルなんてやったことないし!

 目とか瞑っちゃたらどうしよう~。

 私は真木先輩から写真のモデルになる事をお願いされ、快く引き受けた。

 でも、引き受けたまでは良かったけど、その写真が先輩のカメラの中に残ると考えた瞬間、私は少し焦ってきていた。

 島並先輩に相談しようにも、先輩に連絡が付かない。

 本当にあの先輩は!

 この大変な時に何をしてるのよ!!


「じゃあ、まずベンチに座っててもらえる? 僕からポーズの指定はしないから、自然体でお願いね」


「は、はい……」


 そう言われても緊張する。

 真木先輩が私をカメラ越しにジーっと見ていると思うと、段々恥ずかしくなってきてしまう。

 真木先輩はそんな私の事をカメラで撮影し始める。

 あぁ~どうしよう……真木先輩がこのまま撮影していって「君の生まれたままの姿を撮影したい」とか言い出したらどうしよう!

 一応念のために下着は勝負下着だけど!

 私がそんな事を考えながら顔を赤く染めていると、真木先輩はカメラを覗くのをやめ、私の隣にやって来た。


「ほら、可愛く撮れてるよ」


「あ、ありがとうございます」


「やっぱり、女の子撮った方が写りが良い気がするなぁ……平斗は写真写りが悪くてね」


「そ、そうなんですか?」


 写真は確かに可愛く撮れていた。

 やっぱり、趣味でずっと写真を撮っているだけあって上手だなぁ……。


「女の子を撮ったのは久しぶりだよ……」


「え……前にも撮ったことあったんですか?」


「うん……中学の時にね……」


「へ、へぇ……と、友達とかですか?」


「………昔はね」


 真木先輩は悲しそうな表情でそう言った。

 なに!?

 その意味深な感じ!

 も、もしかして元カノとか!?


「まぁ、僕は基本的に風景写真しか撮影しないからね、この写真は家に帰ったら初白さんに送ってあげるよ」


「ありがとうございます! うれしいです!」


 この後、私と先輩は少し写真を撮影して家に帰った。

 色々話も出来たし、お弁当も美味しいって言ってもらえた。

 これは大きな前進だ。

 折角この喜びを島並先輩にも教えてあげようと思ったのに、まだ先輩に連絡が取れない。


「もう! 本当に何してるのよ!」


 帰りの道すがら、私は思わず一人で先輩への不満を口に出してしまった。



「………アホ」


 俺は母さんの手伝いをしようと、キッチンに向かおうとしていた。

 その途中、今日は一切スマホを見ていないことに気が付き、俺が自分のスマホを確認すると、そこには初白からの大量のメッセージが来ていた。


「何かやらかしたかと思ったら、どうでも良い連絡ばっかり……なんか損したなぁ……心配して」


 俺はため息を吐きながら、スマホを仕舞い、キッチンに向かおうとした。

 しかし、丁度その時高弥から電話が掛かって来た。


「ん? もしもし?」


 俺は高弥からの電話に出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る