なんか色々面倒な事になってきた

第43話

「もしもし?」


『あ、もしもし? 平斗?』


「おう、どうした? 死にそうなのか?」


『なんでそうなるんだよ、まぁお弁当は……死ぬほどでは無かったよ』


「あぁ……やっぱりか……それでどうしたよ? 何か用か?」


『いや、今日一日連絡が取れなかったから、大丈夫かなって思って』


「あぁ悪い、道場が忙しくてな……今からも食事会があるからあんまり長話は出来ないぞ」


『あぁ、いや別に大した話じゃないんだ……久しぶりに女の子を撮ったよ』


「初白の事か? 別にそんなの……」


『なんか……昔を思い出したよ』


「……そうか」


 俺はそう高弥が言った瞬間、高弥が何を言いたいのかわかった気がした。

 高弥はきっと三年前の事を言っているのだと……。

 そして、あの時間がもう戻っては来ないのだと……。


「何が昔だよ、俺たちまで高2だぞ」


「はは、そうだね。ごめん、なんかレンズ越しに初白さんと彼女を重ねちゃって」


「……そうか………」


「まさか、彼女をあそこまで憎らしく思う日が来るなんて……あの頃は思ってもみなかったよ」


「もういいだろ、その話は……悪いがそろそろ母さんを手伝いに行かないといけないんだ切るぞ」


「あ、悪かったね、急にこんな事を言って、じゃあまた明後日学校で」


「おう」


 俺は電話を切り、キッチンに向かい、母さんの手伝いに向かった。

 まさか、高弥があんな事を言うなんて以外だったな……。

 初白に本当に気があるのか?

 そうだったら、初白は上手くやったようだな。

 それにしてもあの高弥がここまで興味を持つなんてな……。


「あいつもそろそろ彼女が欲しいのかな?」


 まぁ、高二だし彼女が欲しいと思ってもおかしくない年齢だからな。

 初白は他の女子生徒に殺されないと良いけど。

 俺はそんな事を考えながら、母さんの手伝いをしていた。

 料理も出来上がり、いよいよ食事会が始まった。

 門下生とその家族を合わせると人数は三十人近く集まった。

 師範である父さんが色々話をした後、食事会はスタートした。

 俺は城埼さんと年代が近いという事もあり、近くに座るように父さんから言われ、城崎さんの隣で飯を食べていた。


「あ、あの……島並さんは一日どれくらい稽古をしたんですか?」


「え? あぁ……平日は三時間とかで、休日は六時間とかかな?」


「なるほど……」


「……城崎さんは強くなりたいの?」


「はい! 空を飛べるくらいになりたいです!」


「それ、どっかの七つのボールを集める漫画の中の話だよ」


「え! 空は飛べないんですか!?」


「いや、飛べたらその人はもう人間じゃないよ……」


「なんだ……」


 マジで飛べると思ってたのかこの子?

 この子って少し天然なのか?

 まぁでも、武術に興味を持って色々調べたんだろうな。

 この子は体も小さいし、今のままじゃ力も弱いけど、稽古を積めば化けるかもしれないな。

 ま、根拠はねぇけど。


「あ、あの……島並さんはもう……本当に稽古に来ないんですか?」


「あぁ、学校もあるし、勉強もしないとだし」


「……た、たまにで良いので来てくれませんか? 私、島並さんに教えてほしいです……」


「え?」


 一体、俺の何が良かったのだろうか?

 彼女は俺にそんな事を言ってきた。


「いや……俺より親父の方が教えるの上手いと思うけど……」


「島並さんが良いです……だめですか?」


 おぉ……そんな感じで頼んでくるのは卑怯だぞ……。

 城崎さんは上目遣いで俺にそう頼んでくる。

 なんで俺にこだわるのかはよく分からないが、こんな風に頼まれると断りずらくなってしまう……。


「いや……俺はもう……」


「おいコラ平斗!」


「いてっ! な、なにするんですか……」


 俺が城崎さんと話をしていると、反対側の席に座っていた茜さんが俺の頭を叩いてきた。


「まったく、何デレデレしてんだよ、やらしぃ~」


「別にデレデレなんかしてませんよ」


 まぁ、仕掛けたけど……。

 だって、この子メチャクチャ可愛いし。

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