一方そのころ友人達は

第37話



 朝、私はいつもよりもかなり早くに目が覚めた。

 理由は簡単だ、お弁当を用意するためだ。

 島並先輩と付け焼刃ではあるが練習をした成果を出し、私は何とかお弁当を形にした。

 時刻は7時30分、お弁当を作り終えた私は自分の部屋に戻って何を着ていくかを考えは始めた。

 あんまり派手なのはちょっとあれだし、落ち着きすぎたのも地味かもしれない。

 昨日の夜あれだけ悩んだのに、翌日になっても全然決まらない。


「はぁ……どうしよう……何を着て行こう……」


 私がそんな事を考えていると、机の上に置いてあったスマホの音が鳴った。

 誰かからメッセージが来たらしく、私はスマホを確認する。

 メッセージの相手は島並先輩だった。

 一体どうしたのだろうか?

 もしかして、私を心配してメッセージを送ってきたのだろうか?

 なんだ、良いところのある先輩じゃない……。

 そんな事を思いながら、私はスマホの画面を見る。


【とりあえず落ち着け】


「え? これだけ?」


 落ち着けって何よ!

 別に私は落ち着いてるし!

 何よ!

 私が落ち着きない女みたいじゃない!


「もう! あの人はもっと気の利いた事を遅れないのかしら!」


 私はスマホを閉じ、再びスマホを選び始めた。

 とりあえず落ち着けかぁ……。


「まぁ……少し焦ってたかな?」


 私は島並先輩のメッセージを思い出し、大きく深呼吸をし、落ち着いて再び服を選び始める。


「あ、これ良いじゃん……やっぱりいつも通りが一番だよねぇ~」


 着ていく服も決まり、お弁当も完成した。 

 持っていく物も確認したし、これで準備万端!


「いざ! 決戦の地に!」


「蓮花~うるさいわよぉ~」


「ごめん! お母さん! 行ってきます!」


「はぁ~い、気を付けてねぇ~」


 私は昨日夜遅かったお母さんにそう言って、自宅を出た。

 真木先輩との初デート!

 ここでいっぱいアピールして、真木先輩との距離を縮めないと!

 私はそんな事を考えながら、待ち合わせ場所に向かった。




 朝、僕は目が覚めてスマホを見た瞬間、友人からのメッセージに疑問を浮かべていた。


「えっと……なんで【死ぬなよ】なんてメッセージを送って来たんだ? 僕の身に今日、一体何が起こるんだ?」


 僕は友人からのメッセージの意味が分からないまま、朝食を済ませて出かける準備を始めた。

 今日は久しぶりに風景の写真を撮りに後輩の女の子と一緒に行くことになった。

 本当だったら、平斗も一緒に三人で行きたかったのだが、平斗は家の手伝いがあるらしく断られてしまった。


「まさか、初白さんと二人になるなんて……でも、これはいい機会かもしれない」


 初白さんを知るにはこれは絶好の機会だ。

 僕は彼女にはひそかに期待を寄せている。

 何の期待かというと、それは平斗のあの噂を消すための期待だった。

 初白さんはなんでも一年生の中では人気が高いらしい、そんな子が平斗を慕っているとなれば、きっと平斗について初白さんに何かを聞くだろう。

 その時に初白さんが平斗はそんな人間でが無いと擁護してくれれば、平斗のあの噂は収束するかもしれない。


「問題は初白さんが本当に良い子かってことなんだよなぁ……」


 僕の見立てでは、今のところ初白さんは良い子だ。

 明るいし、優しいし、平斗とも普通に話をする。

 何より、平斗の噂を信じていないというのがポイントが高い。


「自分で見た物しか信じないか……確かにそうだよな……」


 今日で初白さんがどんな子なのかを確かめ、初白さんが本当に良い子なのなら、僕は平斗の過去に何がったかを初白さんに話すつもりでいた。


「写真に集中できるのかな……今日は……」


 僕はそんな事を呟きながら、カメラを整備しレンズを覗く。

 僕は一刻も早く平斗の誤解を解いてあげたかった。

 クソ野郎のレッテルを張られたまま、平斗が学園生活を送るのを僕はもみたくなかった。


「さて、そろそろ行こうかな……」


 僕はカメラをバックに仕舞い、荷物を持って家を出た。

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