第36話
「いや、大丈夫だよ、それに……」
「奥さん私も手伝いますよ!」
そう言って家にシャワーを浴びて着替えをした茜さんが入って来た。
あぁ……来ちゃったよ……。
「はぁ……来ちゃったよ」
「あぁ!? なんだその言い草は!」
「イテテ!! ひっはらないへくらさい!」
茜さんは俺の言葉が気に入らなかったのか、俺の頬を思いっきり引っ張って来た。
だって、この人味音痴で滅茶苦茶な料理しか作らないんだもん……。
それでうちの門下生の何人が被害にあったか……。
「茜さんは門下生なんですから、座って待っててくださいよ」
「それは悪いだろ! 奥さん一人で十数人分の料理の準備なんて!」
「だから俺が手伝いに来たんですよ、茜さんは良いから座って待っててください!」
「あ、コラ押すな!」
「さぁ、行きますよ! 稽古で疲れてるでしょ!」
「別に疲れてなんかねーよ! 良いから離せ!」
俺は暴れる茜さんをなだめながら、茜さんを自宅のキッチンから遠ざけ食事会をする大部屋に茜さんを連れて行く。
「たく……なんで私に手つだわさせねーんだよ」
「茜さんは門下生だからです。俺達にとってはお客様ですからね」
「私は別にそんなつもりで来てねぇよ」
「毎月金を払って貰ってますからね、そうもいきませんよ。てか、城崎さんはどうしたんですか?」
「あぁ、まだ多分シャワー浴びてるんじゃないか? 私は先に上がってきたから」
「あぁ、そう言う事ですか、じゃあもう大部屋に居るかもしれないですね」
そう言いながら、俺が大部屋の戸を開けると既に大人の男性陣は酒を飲み始めていた。
「まぁ、他の人たちと待っててくださいよ」
「たく……なんで私に手伝わせないんだよ……」
中に入ると、今日稽古をした人はもちろん、食事会に参加しに後から門下生もいた。
「平斗君、ひさしぶりぃ~」
「あ、真奈美(まなみ)さん、来てたんですね」
そう言って話かけてきたのは、茜さんと同い年の門下生の女性で真奈美さんだ。
うちに居る女性門下生の一人で茜さんとは違う意味で男っぽい性格の人だ。
一言で言い表すとがさつなのだ。
「二人で何してたのん?」
「いや、茜さんがキッチンに立とうとしていたので……」
「よくやった少年、褒美を与えよう」
真奈美さんはそう言うと何かを察して俺にそう言い、親指を立てて俺に向けてくる。
まぁ、真奈美さんも前に茜さんの料理にやられた犠牲者だしな……。
「茜、大人しく座ってようねぇ~」
「真奈美までそんなこと言うのかよ!!」
「はいはーい、あっちにジュースあるわよぉ~」
「あ、コラ! だから押すなって!!」
真奈美さんはそう言って、茜さんを連れて行った。
さて、茜さんもどうにかなったし、キッチンに戻るか。
俺は一旦大広間を離れ、キッチンに戻って行く。
すると、戻る途中でシャワーから上がった城崎さんにあった。
「あ、シャワー上がったんだね」
「はい、すごいですね、道場にあんな大きなシャワールームがあるなんて」
「まぁね、出来たのは結構最近なんだけどね。みんな大部屋に居るから行ってみなよ、茜さんや他の女性門下生も居るから安心しなよ」
「はい、ありがとうございます。島並さんはどちらへ?」
「あぁ、俺は母さんの手伝いにキッチンにね、多分そろそろ応援が来ると思うけど、しばらくの間母さんを手伝わないといけないから」
応援とは道場にダイエット目的で通っている奥さんや門下生の人たちの家族だ。
うちの道場の食事会は基本的に参加は誰でも自由だ。
だから、家族ぐるみで参加する人も多く、奥さんや門下生のお母さんなども手伝いに来てくれる。
今日もそろそろ来る頃だと思うが、俺も出来る事をやりに行く。
「そうなんですか、私も手伝いますか?」
「いや、大丈夫だよ。城崎さんは座って待ってな、もうそろそろで準備できるから」
「わかりました、それじゃあお先に……」
城崎さんはそう言って広間に方に向かっていった。
さて、俺も母さんの準備に向かうか……。
そういえば、初白は上手くやれたのだろうか?
一日道場の方で忙しくて、一切スマホを見ていなかったが、何もなく終わっただろうか?
俺はそんな事を考えながら、スマホを取り出して通知を確かめる。
「うわ……初白からのメッセージが34件!? あいつ……何かやらかしやがったか……」
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