第17話

「そんじゃ、自分はこれで! どうも御馳走様でした!」


「気を付けて帰るんだぞ、竹内」


「事故にあわないようにね」


「竹内さん、捕まらないでくださいね、悪人面なんですから」


「おい平斗、どういう意味だ?」


 食事を終え、夜の八時を少し過ぎた時間に竹内さんは帰って行った。

 竹内さんが帰った後、俺は自分の部屋に戻り自分の時間を過ごしていた。

 今頃、高弥は初白に俺の過去の事を話しているのだろうか?

 まぁ、高弥の話を聞いて初白が俺をどう思ったとしても、あんまり支障はないな……。





 僕は家に帰り、食事を済ませて自室で自分の時間を過ごしていた。


「九時に電話するって言ったし……まだ少し時間あるな」


 夜は初白さんに電話をする予定があるが、まだ少し時間がある。

 学校からの課題も終わったし、スマホでも見て時間をつぶそうか……。

 僕は机の上に置いて置いたスマホを手に取り、アプリでネットのニュースを見始める。

 ニュースを見ながら、僕はふと考えた。

 

「考えてみれば……平斗は初白さんをよく知ってるかもしれないけど……僕は全然知らないな……」


 それなのに、簡単に平斗の過去の真実を簡単に話してよいのだろうか?

 ファーストフード店では彼女の言葉につい浮かれてしまい、教えるなんて簡単に言ってしまったが……そんな簡単に話ていいのだろうか?

 あの真実を平斗が黙っているのにも理由がある。

 この真実をあまりおおやけにしたくないと平斗も言っていたし……こんな簡単に初白さんに話すのはまずいだろうか?


「あ! いつの間にか九時に!」


 考えてる間に約束の時間になってしまった。

 僕はとりあえず初白さんに電話をかける。

 三回コールが鳴った後に初白さんは電話に出た。


『も、もしもし!』


「もしもし? 初白さん?」


『は、はい……そうです……こ、こんばんわ』


「こんばんわ……さっそくなんだけど……」


『は、はい……島波先輩の過去の話を教えてくれるって……』


「そのことなんだけど……ごめん、まだ君には真実を話せない」


『え!? ど、どうしてですか?』


「……僕は正直君を全然知らない、平斗のこの話は結構その……重大な話なんだ……」


『そ、そうなんですか?』


「あぁ……だから……仲良くなろう」


『ふぇ!? な、なんですか! 急に!』


「そのまんまの意味だよ、僕は初白さんと仲良くしたいからね……だから話す時が来たら話すよ」


 この言葉は俺の本心だ。

 初白さんは平斗と普通に接してくれる女の子だ。

 もしかしたら彼女がきっかけで、平斗の周囲からの評価が変わるかもしれない。

 だから俺は彼女と仲良くなりたかった。

 

『な、なるほど……それほど島並先輩の過去が重たい物だってことがわかりました……多分、私なんかが軽々しく聞いちゃいけないんですよね?』


「あぁ……平斗は……一回地獄を見てるからね……」


『地獄?』


「うん……で、さっそくなんだけど、明日は暇かな?」


『え? ま、まぁ……ひ、暇です……』


「じゃあ、一緒に帰らないかい?」


『え……えぇ!? い、いいんですか!?』


「良いも何も、誘ってるのは僕だよ? それに初白さんの事をもっと知りたいし」


 彼女が信頼に値する女の子なのかどうか知る必要がある。

 だから僕は彼女との距離を縮めようと考えた。



『じゃあ、そろそろ僕はこれで、また明日学校で』


「は、はい! お、お休みなさい……」


 私は通話が終わった後、自分のスマホの真木先輩の連絡帳を見ながら、先ほど起こった出来事を整理していた。

 まず、残念ながら島並先輩の噂については何もわからなかった。

 そして、真木先輩から一緒に帰ろうと誘われた……。

 来たわよね!

 これは絶対来たわよね!!

 絶対私に気があるわよね!

 真木先輩絶対私が気になってるわよね!!


「うふ……うふふふふ……」


 私は嬉しくて、思わずベッドの上でゴロゴロ転がり回った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る