第7話 駄女神の説明 その1の1

 女神エスティから言われた事は‥‥‥



 「俺と千代が魔王を倒す?!」



 コウと千代はエスティが言っている意味がわからなく、お互い顔を見合わせた後にエスティを見るが、エスティは平然とした表情で「うん」と頷く。で、

 


 「まあ、実際は貴方、神坂かみさかこう貴方がするんだけどね♡」



 エスティが今度は、ニコリと笑顔で言うと

コウは目を大きくして驚く。



 「はあ?俺が!?‥‥‥うん?‥‥て、な、なんで俺の名を⁈」

 「うん?なんでって知っているわよ。隣に居る女の子の名前もね。岡崎おかざき千代ちよさん」



 千代はエスティに、自分の名前を言われてコウと一緒に驚く。そして千代もコウと同じ質問をする。



 「!‥‥‥私の名前も!?‥‥‥なんで知っているんですか!?」



 するとエスティは



 「だって、この世界に送り込んだの私だもの」



 コウと千代はエスティのこの言葉に、驚きを通り越していた。

 それはそうでしょう。二人をこの意味の分からない世界に送り込んだ張本人が目の前にいるのだから。

 で、コウは定番のセリフをエスティに言う。



 「おい!俺たちを元の世界にもどしてくれ!」

 「う〜ん?‥‥‥それは無理ね」

 「はあ?無理て‥‥‥どう言う事だよ!」

 「だって私は送る事は出来ても、送り返す事は出来ないんですもの」

 「返す事が出来ないって‥‥‥じゃあ、俺と千代はこのままかよ!」

 


 コウは、この無謀としか言えない話の内容に、エスティに詰め寄る。その横では千代が不安げな表情をして、今にも泣きそうな状態。

 



 「‥‥‥本当に帰れないの‥‥‥本当に元の世界に戻れないの‥‥‥お父さんとお母さんには会えないの‥‥‥」

 「千代‥‥‥」



 千代はコウの背中に泣きながらしがみつくと、顔をコウの背中に埋めた。そんな千代の姿を心配そうにするコウ。そして、更にエスティに詰め寄ると、



 「魔王を倒すだの、そんなの俺たちには知った事ではない!それよりも元の世界に戻せ!」



 コウが強く抗議すると、エスティは少しイラつき、眉毛をピクリと動かす。



 『なんなのコイツ!こちらが優しく出てれば‥‥‥うん?あ〜、そう言う事ねー』



 エスティは心の中でニヤッとすると、何か感じたのか、



 「貴方、その子の事がすきなんでしょう!だから必死になると♡!」



 エスティがなんだかにやけた顔でコウに言うと、コウは「なんだコイツは」的な表情でエスティを見る。



 「あのな〜、俺は元の世界に‥‥‥」

 「も〜う♡無理しない無理しない。貴方の気持ち♡。この子の事を必死に護りたいのね♡」

 「///なぁ!なに言って‥‥‥」

 「あっ!そうかあ〜♡もしかして照れ隠し?♡」

 「はあ?」

 「うんうん、いいの、わかるわよ〜」

 「はあ?何がわかるんだよ!」

 「私にも惚れたのね♡そりゃあそうでしょうねー♡、目の前に、こんな綺麗な女神がいては、ね〜♡」

 「‥‥‥‥‥‥」



 自信満々に言うエスティに、コウは白い目でエスティを見るが、それに気づかないエスティ。そんなエスティに、今まで泣いていた千代は、



 「‥‥‥コウちゃん、もしかしてこの女神様‥‥‥」

 「ああ‥‥‥駄女神だ‥‥‥」



 いつの間にか、元の世界に帰る事を忘れる程、呆れながらエスティを見る、コウと千代だった。

 

 



 

 

 

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