第4話 プロローグ4 女神エスティ?

 遠くから聞こえて来る獣が叫ぶような雄叫びが、徐々にコウと千代に近づいて来る。

 それは、森の木々をバキバキと折る音と共に‥‥‥。



 「コ、コウちゃん‥‥‥」

 「あ、ああ‥‥‥」



 千代は得体の知れないのが近づく音に、恐怖で体が震え、コウの腕にしがみつく。

 コウも恐怖していたが、男として千代を守らなければとの思いで、自分の体を盾にするかの様に、千代を自分の後ろに下げた。

 その時、微かに人の声が聞こえてきた。



 「‥‥‥逃げろ‥」



 声のする方に二人は向くと、木々の間を誰かが飛びうつっているのが見えた。

 二人は最初は「サル?」かと思っていたが、それが人だと直ぐに分かった。

 ただ、木々に飛びうつるスピードは人並外れていた。それ故に二人は「サル?」かと勘違いをする程だ。

 そんなコウと千代の前に何かが起ころうとしていた。

 で、ある場所では‥‥‥



 ◇◇◇



 小高い丘が地平線まである様な世界。

 空は気持ちが良い程の青空。

 森の木々、地面の草原も、まるで草木が春のそよ風に気持ち良さそうに揺れる。

 全ての心が、穏やかになるようなそんな陽気。

 ここは天国なのか?‥‥‥

 いえ、ここは天界‥‥‥

 多種多様な女神様がいる世界。

 そんな世界に、まるでおとぎ話に出て来るような、お菓子の家のような家の中のリビングらしきにあるテーブルに備えられた丸い椅子腰掛けた1人の美女。



 「‥‥‥あの子、大丈夫なのかしら?」



 そうポツリと呟いたのは、金髪に腰まである長さのストレート、淡いピンク色の丈が膝まであるスカートにスレンダーな体に密着したドレスを着込んだ巨乳美女。


 そんな美女が心配していると、部屋のドアがノックされて、ドアが開くと、そこにも1人の美女が立っていた。


 

 「ハァ〜、とりあえずは‥‥‥」



 疲れたかのようにため息をして、安堵した表情で、部屋に入って来た。

 この美女の表情はなんだか幼く見える。服は、先ほどの美女が着ていたピンクとは違い、スカイブルーのドレス。

 ただ、先ほどの美女とは違い、胸は普通サイズ。

 髪も青く、髪型は少しウェーブの癖っ毛が入った肩より少し長い髪。



 「エスティ、上手くいった?」

 「あっ、エスカお姉様。ハイ、何とか」

 「何とか?って、エスティあなたね〜(少しため息)」

 「大丈夫ですよ。今度はちゃんと送りましたんですから」

 「本当に?」

 「本当にです!」

 「じゃあ、ちゃんと送った人を見届けた?」

 「えっ?‥‥‥見届け?‥‥‥うっ!」

 


 エスカがエスティに疑いの目で見ると、エスティは一瞬、考え、気まずそうな表情をすると、「テヘ、ペロ」的な表情で、自分の頭を軽く「コツン」と叩いた。

 それを見たエスカが、またため息をして、エスティをギロリと睨み付ける。

 そんなエスカを見たエスティは一瞬、固まり、



 「だ、だ、大丈夫です、お、お姉様。ちゃ、ちゃんと後で見届けしに行きますで‥‥‥」



 少し焦りながらエスティが言うと、エスカがまた睨みつけ



 「はい?後でぇ〜?エ〜ス〜ティ〜、あなたね〜(怒)」

 「『あっ!エスカお姉様がぁぁぁ(恐怖)』お、お、お姉様!い、今から行きます!(焦)」

 


 そう言うと、エスティはエスカの顔色を見ないまま、一目散に部屋を飛び出て行った。

 そんなエスティを見てエスカは、ヤレヤレとした表情で、



 「‥‥‥あの子、また放置て事はないわよね‥‥‥」



 一人で呟きながら、またため息をした。


 因みにこの美女二人は、女神である。

 姉のエスカは自由を司る女神。

 妹のエスティは‥‥‥まだ決まらない。と言うか、今は女神の修行中。

 女神の修行は、神から与えられた世界を救済する事で、真の女神になる事が出来る。

 のだが、このエスティはやる気はあるのだが、妙に飽きっぽい所があり、任せられた世界を未だに救済していない。

 と、言うか、ドジっ子女神様なのである。

 そして、その世界を行き来出来る部屋、つまりは女神が鍛錬する部屋を『女神の部屋』と言う。



 「はあああー、何とかお姉様から‥‥‥お姉様、あんなに綺麗なのに怒ると悪魔も恐るぐらい豹変すりから‥‥‥。けど‥‥‥私、見届けもそうだけど、あの空間で説明したっけ?」



 エスカから逃げられて、ホッとしたのか、自分が説明したかを考えていた。



 「う〜〜〜ん‥‥‥あっ!私、してなかった!‥‥‥まあ、いいか。今からしに行けばいいし。‥‥‥けど‥‥‥なんであの2人を選んだのだろうか?」



 なんて考えながら『女神の部屋』にエスティは着いた。

 この部屋の扉はまるで何処にでもある普通の茶色扉。そこにエスティが手をかざし、念の様な物を送ると、扉が勝手に開いた。

 その部屋は十畳程の部屋。その先には祭壇があり、祭壇には4メートルはあろうかの大きな丸い鏡が飾られていた。

 その前にエスティが立つと、エスティが呪文の様な物を唱えると、「スウッー」とエスティの姿が消えた。

 

 

 


 

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