第10話 よろしくお願いします

「ということで、百合ちゃんが入ってくれることになりました。」


「「「「おぉー。」」」」


声を揃えて拍手をする4人の先輩たちの前に立ち軽くお辞儀をする。


「改めて、1年の水野百合です。」


「よろしくね百合ちゃん。」


「あ、じゃあ早速香織のお墨付きの演技力見せて欲しいんだけど!」


目をキラキラと輝かせて圭さんが距離を詰めてくる。


「圭さん、後輩を怖がらせないでください。貴重な後輩なんですよ。」


「そういえば、私以外に入部した子って居るんですか?」


周りを見ても1年生は私しか居ないようだった。

今日は来てないのかと思い先輩達に聞くと、あからさまに落ち込んだ。


「いや、まぁ、去年もそうだったけど、あんなの見せられたら誰も入りたく無くなるよ…。香織がどうしてもって言うからやってるんだけど。」


「だよね〜。去年は奏が居たからまだ良かったけど、今年は覚悟してたんだよね〜。」


「一応、先輩方目当てで入部した男子が数名居たんですが、双葉先輩と香織先輩がスパルタ教育したもんですから、みんな辞めましたね。」


「そんなこともあったな…。あの時の香織と双葉は鬼だった…。」


「あの時はちょっと焦ってたから…。」


なるほど。そういう事か。


「今年は少し余裕があるから、1からゆっくり教えてあげるから心配しないでね。」


この人もまた、


「勝ちますよ。必ず。」


私が香織さんと双葉さんを見てそう言うと、2人は顔を合わせたあと力ずよく頷いてくれた。


その顔はとても凛々しく、とても本気なんだと伝わった。


双葉さんも、超えなければならない人が居る。

理由は知らないが、私はできる限りのことはやるつもりだ。


二人の演技は本物だから。


「これからよろしくお願いします。先輩方。」


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