第8話 2度目
私はあの日の劇が未だに鮮明に思い浮かぶ。
あれから1週間が経ち早くも最初の実力テストの日が来た。
入試の時の点数はまぁまぁ良かったらしく、学年3位以内に入っていた為寮の費用が半分になっていた。あと授業料免除。
かなりの待遇のため3位以内を取り続けたい所だが、みんな入試の時はそれを知らなかったからこそ取れたようなもので今回それをみんな知らされている。
費用が浮くならその方がいい。
みんな思っていることは同じで、これからの試験は全て、上位3位以内争いが加速する。
テスト用紙が配られ1時間目が始まるチャイムと同時にシャーペンの走る音が響く。
今回のテストは国語、数学、英語の三教科で私にとっては余裕な問題ばかりだった。
しかし最後まで気は抜かず何度も見直して終わりの合図が鳴るまでテスト用紙をずっと見ていた。
その調子で残りの二教科も無事終わり、4時間目は通常の授業へ入る。
クラメイトのほとんどはこの時点でかなり疲れきっていたようで、居眠りをしている子をちらほら見つけた。
いつも通り4時間目を終え私は自作の弁当を持って屋上へと向かった。
屋上へと繋がる踊り場に差し掛かった時、
「楽しそうね。」
上から声が聞こえた。
「あなた今、すごくいい顔してる。あの時とは大違いね。もしかして、私の影響かしら?」
香織さんの姿を確認してそのまま横を通りすぎる。
「今日が入部届け受付最終日だけど、少しでも気になるなら放課後、入部届けをもって体育館裏にある演劇部の部室に来て欲しいの。私が決心させてあげる。待ってるからね。」
香織さんはそう言って姿を消した。
私はそのまま屋上の扉を開いた。
案外簡単に開いたそのとびらの重みを掌で受け止めながら少し笑ってしまった。
そこからは壊れたように笑い出す。
「あはははははははははは!!」
誰もいない屋上に響く笑い声は誰にも聞こえてはいないが分かってしまう。
「やっぱりバレてるんだ。なーんだ。おかし過ぎて笑っちゃった。それにしてもあの人、自意識過剰すぎでしょ。別にあの人影響じゃない。あの人の演じる役の影響だから。あー、おかしい。」
私たちは2度目の会話の中でお互いの事を気づいてしまった。
「これだから、役者ってのはタチが悪い。」
やっとおさまってそのまま隅の方で一人で弁当を食べた。
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