第4話 彼女
放課後寮に戻ろうとした時ふと思い出した。
「3階の奥の部屋」
私は何故か背中を押されるようにその教室へと足が向かっていた。
扉の前まで来てドアに手をかけたところで我に返りすぐさまドアに背を向けた。
「いやいやいや、演劇なんて興味無いし、なんでこんなとこ来ちゃったのよ。はぁ、部屋の片付けも残ってるし早く帰ろう。」
自分で自分を諭すように呟いた時後ろのドアが音を立てて開いた。
「見学かな?新入生ちゃん。」
「えっ、あの、違くて。」
「まぁまぁまぁ。」
背中を押されて強制的に中へ入れられた。
椅子にすわらさられて飲み物を出される。
中をぐるっと見渡すと色んな道具があった。
「あー、これ全部今度の劇に使う大道具だよ。」
そう言って目の前の椅子に座った人はこの間の人とは少し違う感じの人だった。
にこにこして私を見つめて無言になる。
「あの、なにか?」
無言の圧力に負けつい話しかけてしまう。
「本当に来てくらるとは思わなくてね。やっぱり君、つまらなさそうな顔してる。」
そう言われて彼女をじっと見つめ返す。
「え、まさか、あの時の?」
「えぇ。」
そう言って彼女はウィッグを取り出しながら笑った。
「あの時、見学に来る子達を驚かせようと思ってロングヘアのウィッグ被ってお淑やかな女性を演じてたの。どう?気づかなかったでしょ?」
彼女はショートの髪にロングのウィッグを乗せながらそう言うと昼とは違う無邪気な笑顔を作った。
「全然分かりませんでした。」
「そりゃあもちろん。私は役者だから。」
そう言うと今度は昼に見たあの上品な笑みをみせた。
私はその笑みに、またもや見とれてしまう。
この人は、まるでいくつかの人格を持っているかのような、そんな気がして少し怖くなった。
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