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黒崎の放った弾丸は、しかしレベッカには当たらなかった。すっ、とレベッカの位置が移動したように見えた……。目の錯覚かのように。

「俺にできることは自分にもできるってことか、レベッカ」まるでその様子が見えているかのように黒崎は言った。

「簡単な予知ってやつさ。非科学的だが、それを言ったら始まらねーけどよ」くくっ、とレベッカは笑う。「少年、簡単に行こうぜ。やつの動きは俺が止める、少年はそのロンギヌスの槍で黒崎を!」

それを聞いた黒崎の顔には、なんの変化もなかった。それさえも想定の範囲内だとでもいうように。

レベッカは、黒崎へと突進した。互いの距離が埋まるごとに僕の緊張は自然と高まる。僕の手のなかにあるこの槍に、なによりもこのぼくに世界の命運が文字通り握られているのだから。

黒崎は、拳銃を発砲する。そのどれもがレベッカを捉えることができない。そして……、

がくん、とレベッカの足がもつれる。

「ちっ、こんなところで、こんな場面で少年の妹君の精神が……」保たないなんてよ、とレベッカはぎりっ、と歯ぎしりする。

「終わりだ、レベッカ!そこのお兄ちゃんと一緒に魂ごと消えな!」そう言って黒崎は拳銃を向けて、発砲する、その前に黒崎の右手は肘から先がなくなった。

「詰めが甘いよ、黒崎。ぼくのこと捉えられなかったかい?」

そう言ったのは、

「ムーくん!」僕は叫んだ。ムーくんは器用に右手の刃物で黒崎の腕を切り落としていた。

「今だ、おにーさん、ロンギヌスの槍を!」

僕はロンギヌスの槍を黒崎の胸に突き立てた。そして、ぐり、っと手元を捻った。

それは劇的だった。

槍から光が迸り、黒崎と呼ばれた存在は、そのなかに消えていく。そして、僕たちがいる創世の塔も同じだった。目に映るものすべてがこのロンギヌスの槍に収束していくようだった。

「お兄ちゃん、俺は何度でも甦る。そこに人間がいる限り、な」

それが黒崎の最後の言葉だった。

そして、僕は……。

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