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はっ、として僕は目を開けた。気づくと、目の前でレベッカが「少年っ」と僕の顔を覗き込んでいるところだった。その目には心配の色が見えた。僕は、大丈夫だよ、と言って立ち上がった。手元には、ロンギヌスの槍もある。

それにしても、頭がぼんやりする。僕は今何処にいて、なにをしていたのかが曖昧としていた。

夢をみていた、のか。大切なはずなのになにも覚えていない不思議な感覚だ。

「おにーさん、大丈夫かい?ぼーっとしているみたいだけど」レベッカの隣にはムーくんもいる。

そうだ。地震があったんだ。そして、僕たちは……。

目の前で廃ビルがただでさえ半壊していたものが全壊していた。どうやら、レベッカとムーくんに助けられたらしい。

「始まったらしいぜ、少年。破壊と創造ってやつがよ」見ろよ、とレベッカは、全壊して見晴らしのよくなったその先を指差して言った。

「見えるか?あれが創世の塔ってやつさ」

僕たちがいる場所からかなりの距離があるみたいだけど、その塔は此処からでも視認することができるくらいに高い。

「どうやら、俺たちに残されている時間はないようだぜ、少年。あの塔が現れたってことはよ、この世界はあと数時間で無に帰すってことだ」

「…………」

僕は目まぐるしく変わる展開についていけてなかった。

「あの地震は、世界が終わる前兆だ。そして選ばれた人間だけが楽園にいけるってわけさ」レベッカの口調は、いつもの軽さがなくなっていた。「あの創世の塔が現れたってことはそういうことさ」

「あの塔にはいったいなにがあるっていうんだ?いきなり現れて、訳がわかんないよ」

レベッカは僕の疑問に、くくっ、と笑ってから答えた。

「あの塔に黒崎がいるってことだよ、少年」

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