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地面が揺れている。それが地震だと気づくのにしばらく時間がかかった、と思ったが、それは数秒のことだった。


「少年、まずは現状を整理しようぜ」レベッカは、廃ビルのなかで僕と向き合って、そう言った。会話をするだけなら、シムカにあてがわれたマンションですればよかったのだが、レベッカがそれを固辞した。

「あそこはシムカに盗聴されてるかもしれねーからな」どうやら、これからしようとしている会話は、シムカ機関に秘匿にしときたい内容らしい。

「昭和チルドレン狩りの件だけどよ、あれを推し進めたのは、シムカ機関の上層部ってことだ」いきなりの内容に僕は動揺を浮かべた。レベッカは、そんな僕の様子には頓着せず、話を進める。「そして、ワーグナーって奴をこれからの計画に一枚噛ませる気らしい」

「おいおい、レベッカ。その推測は確かなのか?なんの裏付けもなしにそれを信じろってのは、さすがに無理があるよ」

そこでレベッカは、僕の背後に視線を向けた。そこには果たして、あの名無しのムーくんが立っていた。

「久し振りだね、おにーさん」ムーくんは、まるで連休明けの友人に会うような気軽な態度でそこにいた。「ぼくたちは、泳がされていたのさ、シムカ機関に」


「俺もよ、ムーが狙われているって少年から聞いたとき、疑問に思ったさ。黒崎以外でそれができるとしたら、こちら側の住人しかいないんじゃないかってな」レベッカは、淡々と言葉を並べた。「そこで疑惑が募り、ムーからの情報で確信に変わった」

ムーくんは、裏でシムカ機関の動向を探っていたらしい。そして、その思惑に行き合ったというわけだ。

メシアを黒崎にぶっつけるという思惑に。


「少年、俺としてはいくらメシアの力が強大だからって、ムーを見殺しにはできねー。こいつは己の背を預けられる数少ない戦友なんでな」レベッカは、ふうーっとため息を吐いた。「目的は黒崎を消すこと、これは変わらねー。ただし、俺たちの側につくってことは、シムカに背を向けるってことだ。この意味がわかるか?」

僕は、レベッカとムーくんの目をそれぞれ見て言った。

「面白くなってきたじゃないか」

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