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横峰クリニックを飛び出してから、僕は根本的な問題に思い至る。ムーくんの居場所に心当たりがないという決定的な事実に。

「…………っ」

ここで僕の取りうる選択肢はひとつしかなかった。

「レベッカ、ムーくんが殺されるかもしれない!」電話越しに僕は叫んだ。その通話相手であるレベッカは、飄々とした口調で答える。

『笑えねージョークってのは少年の嫌うところじゃなかったのかよ。殺しても死なないムーの野郎が、だって?』

そこで僕は、落ち着きを取り戻すため、ひとつ深呼吸をして、レベッカに事の重大さ、抜き差しならぬ状況を説明した。

『昭和チルドレン狩り、ね。くくっ、人生ってのは、望む方向にはなかなか行かせてくれねーな。黒崎の魂を消す前に、まずはムーを保護しねーといけねーってわけだな。まったく、ややこしくなってきやがったぜ』レベッカは電話越しで不敵に笑うのだった。


それから一週間が過ぎても、ムーくんの所在が明らかになることはなかった。

まさか殺された、ってわけじゃないよな、と信じたいが、現にムーくん以外のメンバーは殺されてるわけだから、それを否定できるだけの根拠がないのも事実だった。


昭和チルドレン殺害事件は、シムカ機関によって揉み消され、表沙汰にはなっていない。にもかかわらず、街では六人の子供の死体が発見されていた。

そこにどんな因果関係があるのかは、僕にわかるはずもなかったが、どうにもきな臭い感が否めない。

発端は、あのワーグナーというアメリカ捜査官だ。ネットではワーグナーの自作自演なんて記事もあるが、それも定かではない。

わからないことが多すぎる。これはよくない兆候だ。

そして、現実はそこから更に逸脱していくことになるのだった。




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