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「この子たちは……っ」横峰先生は、子供の死体を見るなり歯の音が合わず、がたがたと震えて、顔は色を失くしている。そして小さく呟いた。「昭和チルドレンっ」
え。昭和チルドレンって、名のままの子供の集団ってわけか?まあ、輪廻を重ねて、その正確な齢は、僕には計りようもないのだけれど。
「先日、ナオミ先生に見せてもらった動画と、この昭和チルドレンたちの殺されかたは類似していますけど、なにか因果関係があるんですかね?」
先日の横峰先生の見解では、魂を探しているといったものだったけれど。
「雨宮くん、今、確信したわ。あれはデモンストレーションだったのよ」顔色が優れないまま横峰先生は言う。「これは、昭和チルドレン狩りよ」
「昭和チルドレン、狩り?」あの名無しのムーくんもかなりの曲者だったけれど、それに比する六人を相手取って、なまじ殺すとなると、犯人はいったいどんな化け物なんだ?
あまり考えたくはないけれど、黒崎や周防に匹敵する存在がこの街にいるということになる。
「…………」横峰先生は、それこそ魂が抜けたように存在感が希薄だった。
いや、魂、か?
「ナオミ先生、この犯人の目的って、昭和チルドレンの魂なんですね」
「…………」ナオミ先生は、冴えない顔で頷いた。そして、「すべての昭和チルドレンの魂を食らうことによって、顕現できるのよ、この世界に」
それって?と僕が促すと、横峰先生は、
「すべての理を統べるもの。つまり……メシアに」
メシア。救世主と呼ばれる存在。もうなにがなにやら、僕の頭のキャパは限界に近い。この街でなにが起ころうとしているんだ?ふふ、あはは。これが笑わずにいられようか。まるで質の悪いジョークだ。
「それでナオミ先生。昭和チルドレンって、あと何人いるんですか?」と僕は努めて冷静に聞いた。
「あとひとりよ。その名は……」
僕は横峰先生の話を最後まで聞かずに飛び出した。
(ムーくん……っ)と内心で叫びながら。
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