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僕はひとりマンションの一室でなんともなしにテレビを観ていた。
「へー、アメリカの捜査官ですか。予知能力、プロファイリング?へー」などと、最近人気の出てきたコメンテーターがしたり顔で述べている。「それにしても何故日本に?」と、コメンテーターは、へらへらした態度を崩さない。
その言われたアメリカ捜査官、名前は、ワーグナーらしいのだが、軽薄なコメンテーターの質問に怒るでもなく冷静に答える。
「仕事ですよ。この日本という国は、アメリカから数年遅れて、猟奇殺人事件が立て続けに起きているみたいですからね。日本の警察が決して無能というわけではないのですが、私がアメリカから呼ばれた理由はそれですよ」と淡々と言う。
「はー、最近だと、内臓を抉り出されて死んだ方たちもいましたね」コメンテーターはあくまで軽薄だ。そこでワーグナーは、頭を抱えた。その突然の様子にスタジオが動揺に包まれる。
「どうしたんですか、ワーグナーさん!」
「子供が殺される。数は、一、二、三……六人。どれも腹を裂かれて殺される」
その言葉を聞いて、僕のなかでなにかが警鐘を鳴らしているのを実感した。
どうせ、やらせだろ、と頭の片隅では認識しているんだけど、ワーグナーという捜査官の言葉が雑音に聞こえないというのが細い糸を手繰るような真実味を帯びていた。僕は、つまらない話がすべて雑音になって聞こえるという能力みたいなものがあるのだ。
そこに横峰先生に見せてもらった映像がフラッシュバックした。
横峰先生が持っている情報になにかしらのヒントがあるのでは。
横峰クリニックに行かねば。そう僕は思い、腰を上げた。
僕が横峰クリニックへと続く階段の前に着くと、先客があった。
そこには六人の腹を裂かれた子供の死体が積み重なっていたのである。
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