26

黒崎に周防。この二人の存在は、あのレベッカでも手に負えない存在である。

そんな相手に僕という、ムーくんに言われたことでもあるけれど、一般人の介入は邪魔以外、足手まとい以外のなにものでもない。

だが、レベッカは、そんなことを一言も、ただの一言も言及しないのである。いや、むしろ能動的に関わらせようとしている。

それは何故か。

その解にもレベッカは言及することはなかった。


「レベッカ、この先に何があるんだよ」僕は石段を登りながら、先を行くレベッカに訊ねる。

レベッカからは、なんの説明もなしにそこそこの標高のある山の登頂へと誘われた。

「少年、周防との対峙で少しは奴らの怖さってのを実感したんじゃねーか?」と、こちらの疑問には答えずにそんなことを言う。

「そりゃな。十分過ぎるほどに痛感したよ。あれは僕には手に負える相手じゃない。それよりもこの山の上にはなにがあるのか教えてくれよ」レベッカからの返答をさして期待もせずに再度訊ねるのだった。


「着いたぜ、少年」

山頂。鬱蒼とした木々に囲まれながら、果たしてそこには鳥居があった。

ここは、神社、か?

「此処は霊的な結界がはってある神聖な場所さ。樹海と言えばわかりやすいかな」

自殺の名所だったりしないよな?そんな僕の葛藤など異にも介さず、レベッカは鳥居を潜り、奥にある祠?に歩を進める。


「さっきの少年の質問の答えはこれさ」

レベッカは、布に包まれた細長い棒のようなものを祠に奉られていたのであろう、それを僕に指し示した。

「おいおい、勝手になにやってんだよ、レベッカ。此処は神聖な場所って言ったのはお前だぜ」僕は罰とか当たらないのかと身構える。


「少年、此処はシムカ機関が秘匿している場所なんだよ。そしてこれが神殺しの奥の手さ」そう言ってレベッカは、その布を剥がし始めた。はらり、はらり、と。

「これは、刀?」だが、周防が持っていたものよりも細長い形状をしている。それはまるで槍みたいな……。


「これは人間の魂に呼応して初めてその真価を発揮する神器。俺やムーには扱えない代物さ。少年、お前にこれを託す」

僕が、これを?

「これが神殺しの最終兵器。核にも匹敵するほどのな」レベッカは、シニカルな笑みを浮かべて言った。

「ロンギヌスの槍さ」

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