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周防。
その名は、昭和初期から黒崎を庇護する者として存在していた。黒崎が生まれた時代に周防は生まれ、そのたびに己の生命を黒崎に捧げ守護してきたという。
僕とレベッカは、カフェに入り、奥のテラス席に座って、店員にアイスティーをふたつ頼んだ。
「俺たちはよ、前世に縛られた存在なのさ。黒崎にしろ、周防にしろ、な。そしてシムカは黒崎が生まれ落ちるたびに敵対した。しかし、だ。シムカ機関が黒崎を止めることができたのは、一度も、ただの一度もないのさ」そこでレベッカは言い淀み、アイスティーを一口含んだ。そして続ける。「それを危惧した国家は一計を案じた。それが広島に投下された核だよ。あれは、黒崎の凶行を阻止するために落とされたのさ」
僕は息を呑んだ。核、だって?
「黒崎を放っておけば、この世界は終わる。時間も時空も飲み込んで、すべてが無に帰すことになる」
僕は突然の話に頭が混乱した。「黒崎ってのは、なんなんだ?お前の話を聞くかぎり、まるで神か悪魔みたいじゃないか」僕は自分で言っていて、馬鹿馬鹿しいお伽噺のようだな、と思った。
するとレベッカは自嘲気味に笑う。「黒崎がやろうとしているのは、世界を一度無に帰し、新たな時代をつくろうとしているのさ。餓えや貧困のない楽園ってやつを、さ」
これを誇大妄想の狂人の言葉だ、と笑い飛ばせれば、どれだけ楽なことだろうか。しかし僕は知ってしまっている。世界の裏側ってやつを。裏の世界の住人たちを。
「少年、俺はもう生まれ変わることができない。これが最後の戦いだ。世界を守るために、人類を亡きものにしないために、敗けることは許されない。黒崎を、終わらせる。今度こそな」そう言ったレベッカの視線は鋭かった。
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