13
それは赤だった。青でもない、黄色でもない、他ならない赤。赤一色。
それが片桐がいたマンションの部屋の惨状だった。
マンションの入り口には、警備員が二人並んで立っていた。僕たちは、先日アポイントメントを取ってあると警備員に告げると、難なく片桐の住む部屋の前まで来ることができた。そして、まずは呼び鈴を鳴らした。だが中からはなんの応答もない。しつこく鳴らしても、平行線を辿るのみである。
僕がドアノブを捻ると、鍵は掛かっていなかった。僕たち三人はゆっくりと慎重に部屋の内部へと入っていく。
そして。
リビングの中央に大の大人が大の字になって倒れていた。だが、そう形容するのは些か言葉が足りない。
口から、耳から、鼻から、目から、腹部から、手足から、それは全身から漏れなく血が漏れていた。そしてその血が血液が部屋を赤く染めていたのだ。
僕がジョリーンさんに確認を取ると、その死んでいる男は、片桐で間違いないらしい。
「これはどういうトリックですか?いや、レトリックですか?」僕は呻く。
僕もシムカに入ってから、数を数えるのも面倒になるくらいに数々の死体を見てきたけれど、しかしこれは異様だった。
死んだ人間を更に殺し、殺し尽くしている。オーバーキルってやつだ。
そこでレベッカは僕に言った。「少年、良いことを教えてやるぜ。これが黒崎って奴のやり方なんだよ」
黒崎。死神と形容されている、ただただ死をもたらすだけの存在。
「しかし、僕たちのやっていることも似たようなものなんじゃないのか?」
「違うね、少年」レベッカは歯をぎりり、と鳴らす。「黒崎の殺しには先がない。魂と呼ばれる概念ごと殺す。つまり輪廻の外側に連れていくのさ」
「ああ、僕たちの殺しはターゲットを天使に浄化させるんだもんな。そして黒崎にはそれがない」
つまり、終焉。永遠の死。魂のサイクルはそこで途切れるってわけか。
「ジョリーン、シムカの上層部には片桐を救済したと報告しておいてくれよ」
「それはいいけど。レベッカ、どうするつもりなの?」ジョリーンさんは、そんなレベッカの言葉に怪訝そうな様子だ。
「決まってんだろ、黒崎を殺す。死神殺しをするんだよ。罪には罰を与えるのがコトワリってやつだろうが」レベッカは凄惨な顔でそう言った。
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