簡単に人を殺す人と、簡単に自殺する人、どちらが怖いか、みたいな問題があったとしよう。

大多数の人は、前者を選ぶ。それは何故か。自分に影響を及ぼす比率が断然に高いからだ。

こんなことを言ってしまったら、倫理観、道徳的にどうかと思ってしまうのだけれど、自分の生命を脅かす可能性があるのは、簡単に人を殺す人だ。

誤解を恐れずに言うならば、簡単に自殺する人がいたとして、それが身内だとしてもだ、自分の生命の危険はゼロに限りなく近い。悲しみのあまり、後追い自殺するってのは、この際除外するとしてだ。


さて。僕の目の前には、その簡単に人を殺す人がいる。

「いや、人を快楽殺人者みたいに言ってくれるが、俺は条件がなければ、誰も殺さねーよ」

「それって、条件があれば誰でも殺すってことじゃないか。そんなの同じだよ」

はん、とレベッカは鼻で笑う。

「自分で俺は死の象徴って確かに言ったけどよ、殺されるべくして殺される奴しか殺さねー。これは条件っていうより、信念だな」

頼むからありすの顔で殺す殺さないみたいなことは言わないで欲しい。心臓に悪い。何より気分が、悪い。気持ち悪い。

「まあ、慣れだよ、慣れ。お前も今日からこちら側の人間になるんだからな」

僕が人を殺すとでも?

「いや、俺の本当の存在意義は、殺すことじゃねー。その先さ」

生きることからの救済だよ。

そして、レベッカは凄惨に、あくまでシニカルに笑うのだった。


少し話したところ、このレベッカという存在を創ったとされるのが、裏の世界で暗躍する、生きとし生ける者すべてから忌避される組織『シムカ』らしい。

あのメモリースティックには、レベッカという死の象徴の魂が入っていたのだとか。後はその魂を入れる器があれば、現世に転生出来るというわけなのだった。

そして、僕はもう後戻りは出来ないところまで足を踏み入れることになる。

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