学校からの帰り道、僕は図書館に寄った。借りていた本を返却するためだ。

特に理由もないのだが、本に挟まっていたメモリースティックは、僕の部屋に置いてある。これも窃盗になるのだろうか、などと益体もないことを考えたが、いや何も考えてはいない行動である。


本を返却した僕は、そのまま家路についた。ありすの言ではないが、今の僕はより読書を楽しむための熟成期間に入ろうという算段である。

僕は帰宅部に所属していて、読書の他に趣味らしい趣味も持ち合わせてはいない。かといって、勉強に身を費やす気にもならず、つまり何もやることが失くなってしまった。

そこで、あのメモリースティックに視線を向ける。あの中には何の情報が入っているのだろうという興味が湧く。


さっそくノートパソコンにメモリースティックを差し込んでみた。

しかし、情報の漏洩を防ぐためなのかなんなのか、そのメモリースティックには暗号によるロックが掛かっていた。

その暗号に対するヒントも取っ掛かりもない。つまりお手上げってやつだ。

こういうときに頼れる奴と言えば。

「あいつ、まだ怒ってんのかな」


それは僕の杞憂だった。ありすは、けろっとしたもので、僕の話を相づちを打ちながら聞いてくれた。

まあ、減るものでもないしな。逆にサイズが増えるかもしれない。とは勿論口には出さない。


「その本に挟んであったのには少なからず意味があると思う。そして、そういう本に興味を示す傾向がある人に対するメッセージが込められていると推測することも出来る」とありす。

「で、ロックは外せそうか?」

「少し時間をちょうだい。私も興味が湧いてきた」

雨宮ありす、本気になります。


それが僕と雨宮ありすとの最後の会話だった。

補足をしておくと、あくまでも僕の知っている雨宮ありすとの会話、というわけなのだが。まあ、同じようなものだけれどね。


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