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 再びつけたテレビはコマーシャルを流していて、ちょうど今日の夜に放送される映画の宣伝をしていた。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は雪彦も何回か見たことがある映画だった。嵐志に聞くと、見たことないと言った。

「タイムマシンって、どうして作ったんだろうね」

 この映画を見る度に、雪彦はどうしてもそう考えられずにはいられなかった。別の時代に行くことは、もしかしたら未来を変えることになるかもしれない。昔を変えてしまったら、今を変えることになる。望まぬ未来に繋がるかもしれないのに。

「今を見るだけじゃ、物足りないからじゃない? それか、今を捨てたいとか。あの頃に戻りたいとか」

 嵐志がそう答えた。

 人の世は楽しいことと同時に辛いことも同じ分だけある。けれどその度に過去に戻りたいとか、未来を変えたいとか考えていたら切りがない。

「ねぇ、今思い出したんだけどさ」嵐志がまた口を開いた。「タイムカプセルも、一つのタイムトラベルだよね。行き先は未来、それも“物″に限るけど」

 生き物だったらそれこそ棺だ。でもそれは暴かれるものじゃない。それに雪彦はタイムカプセルとか好きじゃない。中学や高校の卒業式で埋めた気がするけれど、未来の自分に宛てた手紙なんて、今になっても読みたいと思えない。

 嵐志もまた、中学の卒業式で埋めたと言った。なにを埋めたのかと聞くと、とりあえずいらなくなった校章、と答えてくれた。

「だって、とりあえず十年後に掘り返すとか言ってたけど、それ忘れて知らない誰かに掘り起こされるのは嫌だなーって。大事な物が時間が経って劣化したりしてるのも嫌だし、なにより貴重な資料と博物館に展示されるのはなお嫌だ」

 そう言う嵐志に雪彦はくすくすと笑った。文豪とか良い例だ。書き損じとか、手帳とか、没原稿とか、送らずに隠していた恋文まで博物館で晒されるのだから。

「でもいたよね、秘密のラブレター埋める人」

「あー……いたいた。時を超えた恋? その時流行ってた純愛映画? とかの影響だったよな。そんなぼろっちぃラブレターなんか誰が読むって話だよ」

 くっ、と喉を鳴らしてソーダを飲み干す。

「想いはその場で伝えないと、消費期限切れになるのにさぁ」

「嵐志くんはその場の勢いで動いちゃうタイプだよね。口でも、行動でも」

「そんなことない」

「おや、いなくなった俺を探して広島まで来たのは、ちゃんと予測していたからなのかな?」

 少しからかうと、ぐぬ、と嵐志は口をつぐむ。あまりにも可愛くてごめんね、と頭を撫でるとちょっと頬を朱に染めた。

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