4
再びつけたテレビはコマーシャルを流していて、ちょうど今日の夜に放送される映画の宣伝をしていた。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は雪彦も何回か見たことがある映画だった。嵐志に聞くと、見たことないと言った。
「タイムマシンって、どうして作ったんだろうね」
この映画を見る度に、雪彦はどうしてもそう考えられずにはいられなかった。別の時代に行くことは、もしかしたら未来を変えることになるかもしれない。昔を変えてしまったら、今を変えることになる。望まぬ未来に繋がるかもしれないのに。
「今を見るだけじゃ、物足りないからじゃない? それか、今を捨てたいとか。あの頃に戻りたいとか」
嵐志がそう答えた。
人の世は楽しいことと同時に辛いことも同じ分だけある。けれどその度に過去に戻りたいとか、未来を変えたいとか考えていたら切りがない。
「ねぇ、今思い出したんだけどさ」嵐志がまた口を開いた。「タイムカプセルも、一つのタイムトラベルだよね。行き先は未来、それも“物″に限るけど」
生き物だったらそれこそ棺だ。でもそれは暴かれるものじゃない。それに雪彦はタイムカプセルとか好きじゃない。中学や高校の卒業式で埋めた気がするけれど、未来の自分に宛てた手紙なんて、今になっても読みたいと思えない。
嵐志もまた、中学の卒業式で埋めたと言った。なにを埋めたのかと聞くと、とりあえずいらなくなった校章、と答えてくれた。
「だって、とりあえず十年後に掘り返すとか言ってたけど、それ忘れて知らない誰かに掘り起こされるのは嫌だなーって。大事な物が時間が経って劣化したりしてるのも嫌だし、なにより貴重な資料と博物館に展示されるのはなお嫌だ」
そう言う嵐志に雪彦はくすくすと笑った。文豪とか良い例だ。書き損じとか、手帳とか、没原稿とか、送らずに隠していた恋文まで博物館で晒されるのだから。
「でもいたよね、秘密のラブレター埋める人」
「あー……いたいた。時を超えた恋? その時流行ってた純愛映画? とかの影響だったよな。そんなぼろっちぃラブレターなんか誰が読むって話だよ」
くっ、と喉を鳴らしてソーダを飲み干す。
「想いはその場で伝えないと、消費期限切れになるのにさぁ」
「嵐志くんはその場の勢いで動いちゃうタイプだよね。口でも、行動でも」
「そんなことない」
「おや、いなくなった俺を探して広島まで来たのは、ちゃんと予測していたからなのかな?」
少しからかうと、ぐぬ、と嵐志は口を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます