受験生の小窓

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第1話

うぐいす豆の様な色をしたカーテンから日差しが刺す。もう昼の11時だった。

翔也はベッドから落ちる様に起きると、ほぼほぼ開いていない目でリビングへと向かった。リビングにある茶色の大きな四角いテーブルには父さんが作ったらしい下手糞な目玉焼きがラップに包まれていた。

隣には手紙が置いてある。

「ガンバレ翔也!!父さんも頑張る!!」

ありふれたのメッセージだったが、昼の11時に起きた翔也には耳が痛かった。父さんは昔から優しいが、やたらとお節介なところがある…。やれやれと目玉焼きを口に詰め込んで、翔也はまた自室へと戻った。


ドサッと力が抜けるように回転椅子に座ると顔を両手で叩き、単語帳を広げた。ほぼほぼ開いてない口でブツブツと英単語を唱える。

翔也は浪人生なのだ。



翔也には何もなかった。勉強も出来ないし、運動も出来ないし、特に顔も良いわけでもなかった。でも彼はお調子者でクラスのムードメーカーの様な存在…と言う風に思っていた。高校生、学年が上がるにつれて周囲からのウケも悪くなり、クラスに埋没していた翔也は受験で見返してやるんだと鼻息を荒くした。

結局結果は伴わず、都内の難関私大を軒並み受験したが、見事に全落ちだ。

「お前実力無いクセしてプライド高いよなw」

卒業式で友達から言われた一言だった。

そして翔也は今、浪人している。



「あ゛ーーーーーッッ!!」

大声を上げてベッドに倒れ込んだ。まだ30分しか勉強していない。口数の少ない翔也はあまり言葉で語る事は無いのだが、行動は自分勝手だ。昼飯とボヤきながらまたリビング向かった。カップ麺のビニールを勢いよく破り、中に入っているかやくをボリボリ摘みながらお湯を沸かした。

自分だってこんな状況で受かるわけないのは分かってるマジでヤバい。また父さんに迷惑かける。あーでもだるい。飯食ったらとりあえず文法。。頭の中を自分で掻き回す。いつも注意力が散漫で自堕落。


自室に戻り、英文法の参考書を広げた。

「…」

「んーーー」

貧乏ゆすりが始まる。こうなると集中出来なくなり、またもやベッドに倒れ込む。昔から変わらない布団の匂い。スーと深く嗅いでいるうちに眠くなってきてしまった。もう5月も中旬だと言うのに翔也はこの様な日が毎日続けている。


「…だぁ…」

色々な感情が混ざった溜息が漏れた。

その時だった。隣の家から紫色の声が聞こえてくる。

「あっ…///うぅ…んっ//」

女性の喘ぎ声だ。実は隣には翔也と同い年の女の子が住んでいる。ただし翔也と違って現役で合格していたのだが(笑)。その女の子のお楽しみタイムだったらしい。翔也はバタバタと全裸になると自室の窓に近づき、女の子がいる隣家の方を向いて必死に彼の手で自らを慰めた。

「クソっ」

勉強そっちのけで欲に動く自分、よく見えないじゃないかと憤る自分、よく分からなくなって手を動かすのを辞め、彼はそっと彼女の行為を眺めていた。

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