第6話 急転直下

ある屋敷の一室に丸テーブルを数十人が囲むようにして座っていた。部屋は暗く、蝋燭の光があるだけで顔がほとんど見えないようになっている。

一人だけ大きく装飾の施された椅子に座った頬に傷のある男が口を開いた。



「"影"よ、最近のアリスの行動を皆に説明せよ」



暗がりから黒い服を着た人が姿を表す。



「はっ、対象は森へ出かけております。子供を連れて行っていますのでおそらく訓練ではないかと愚考します。」

「ふむ、エリシアの方はどうだ?」

「そちらは部下からの報告によりますと、王宮で何やら動いているようです。王宮ですので詳しいことは少し難しいかと思います。」

「よい、エリシアが側にいない今がアリスを排除するの好機だと思うがどうだ?」



椅子に座っている全員が揃って頷く。



「わかった。では明日決行に移そう。」



椅子に座っているうちの一人が口を開く。



「方法は例・の・も・の・を使うのですか?」

「ああ、そうだ。アリスを討ち取るのは我々ではほぼ不可能に近いからその方が確実に排除できる。明日が楽しみだな」


頬に傷のある男がそう言って席を立ち窓の外を見て笑っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



翌朝、昨日と同じようにアリスさんと森へ行く道を歩いていた。



「アレク、今日のやることは?」

「剣に魔力を纏わせることです!」

「よしわかっているな。それから今日はちょっと厳しくやるから覚悟しとけよ?」

「いつも厳しいじゃないですか...」



森に入ってからのアリスさんのしごきはやっぱりすごかった。やれ発動が遅いだの、やれ纏った魔力の質が荒いとかとにかく小言が多かった。

でも終わりの方になるとうまくできるようになってきていた。



アリスはその様子を見てふと考える



【 魔力を剣に纏わせるのは、俺でも一年かけてようやくできた技だ。でも今アレクはそれを経った4か月でやってのけた、俺とは比べ物にならない騎士になりそうだ】


「アリスさん、あとどのくらいやるんですか?」

「ん?ああ、今日はこの辺にしておこう。言っとくがまだまだだからな?それを忘れるなよ?」

「も〜いちいち言わなくてもわかってますって〜、目の前でアリスさんのを見たらまだまだだって嫌でも思いますよ!」



アリスさんが優しそうだがちょっと複雑な感情が入り混じったような表情で俺に微笑みかけてくる。このまま行けば学院の入学もSクラスでできるかもしれない。だってあと半年以上あるんだもの!

アリスさんと森を抜けようと歩いていた時だった。



「これはこれはアリス様、第八士団団長様がこんなところで何をなされているのですか?」

「バ・ロ・ナ・伯・爵・!あなたこそなぜこんなところにいるのですか!」



俺たちの前に現れた頬に傷のある男はバロナというようで、謁見の間でアリスさんに対して暴言を吐いていたのも間違えなくこの人だ。



「失礼しました、先に用件をお伝えしないといけませんね。一言で言いましょう、アリス!貴様にはここで表舞台からは退場してもらう!心配するな、貴様は盗賊に不意を突かれたそこのガキを庇って死んだことにしてやる。」



アリスさんが一瞬でバロナの元へ行き、剣を振り下ろすが突然現れた黒服の男によって止められてしまい、不意打ちを食らったアリスさんが黒服の男に蹴られて俺の前に着地した。

その瞬間、地面から魔法陣のようなものが光出した。



「あはっあはっあはははは!!!アリス、アリス、アリス、アリス、アリス!!!よーやく忌々しいお前とおさらばできる。今日という日よりめでたい日があろうことか!!!あ・の・お・方・

の野望のためお前はここでおさらばだ!!!散々消そうとしたのに!消そうとしたのにぃぃ!!...剣・聖・から下ろしたと思ったら今度は第八士団で活躍しやがる...どこまで我々の邪魔をすれば気が済む!!!大人しく無能として兵士として土の肥やしになっておけばよかったんだよ!!そしたらそこのガキも巻き込まれずに済んだのにな!!!」


「!!!!っっっクソ!体が動かない...俺はどうなってもいい、そこのアレクだけは見逃してくれ」



苦しそうにしながらアリスさんがそう言った

だがその結末を見届ける前に俺の視界は白い光で覆われていく。



「助けろ?いやいや、冗談はやめてくださいよ、元・剣・聖・候・補・どの?もう見るとこ見られちゃったんだから同・じ・よ・う・に・消すに決まってるでしょうが!!!なぁに、アリス、貴様を今この場で殺すのができないことは知っている。だから面白い場所に送ってやるよ!!!運が良ければ助かるかもな、まぁそこのガキはむりだろうけど!!そこで後悔すればいい!!はっはっはっはーーー!!!」



それを最後に光が俺の全身を覆った。



「   アリスさん!!!  」



もうバロナの声もアリスさんの声も聞こえない。



これからどうなるのかもわからない。



会話の内容からしてどこかへ飛ばされるのだろう、ということはうまくいけば帰れるってことだ。



まだ生きたい。



気づけば今まで死にたいと思っていた俺が自然とそんなことを思っていた。



アリスさんは絶対に死なない、絶対に生きて屋敷に戻るはずだ。



だから俺も死なない絶対に死なない。死んではいけない。



まだあの人に恩を返せてない、学院での生活も俺を待っているんだ。



こんなところで終わってたまるか。



どれだけ時間がかかろうとも必ず生きて帰る。



だからどうか待っていてください。













 アリスさん

   俺は何があろうと必ず生きて帰ります



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