第5話 オネェちゃんと光属性

翌朝、身支度を整えて門の前に行くとアリスさんが騎士団の制服に剣を二本腰に携えた状態で待ってくれていた。

手には何やら2本の剣を持っている。



「おはよう、今日から森に入るわけだけど準備はできてるな?」

「もちろんです!」

「よし、今回の目的は学んだサバイバルの知識を実際に使ってみることと、剣と魔法をそれぞれ使って動物を狩ることが目的だね。後これをあげるよ。」



そういうと手に持っていた二つの剣を俺に渡してきた。

どちらの剣も見た目は同じで重さも全く同じような感じだった。



「その二つの剣は俺の剣には数段及ばないが、普通の騎士団が使っている剣よりかは質が良い。」

「そんなに凄いもの俺が待っていても良いんですか?」

「俺からのプレゼントだ!」

「ありがとうございます。でもアリスさんの剣より数段落ちるって、アリスさんの剣は一体なんなんですか?」

「これか?これは魔剣と言ってな、剣に魔力を纏わせることができるんだ。普通の剣でも同じことをできなくもないけど、威力が段違いになる。剣の切れ味も抜群で何より持ち主の能力を高めてくれる不思議な剣なんだよ。」

「ヘェ〜、どうやったら手に入れられるんですか?」

「これはな〜、誰にでもは教えられないんだよ。教えて良いのは魔剣を持った人を模擬戦で負かすか、魔剣を持つに値すると認められなければ教えられないんだよ。」

「そうなんですね、カッコいいから欲しいと思っちゃいました。」

「だろ? それじゃあ森まで行こうか。」



実際にアリスさんの魔剣は剣身が黒色のと赤色のものの二つ持っていてどちらも剣身自体に模様が入っていてそれがかっこいい。



城門を出て少し歩くと森の入り口に到着した。

アリスさんによると森は二種類あるらしい。今入ろうとしているこの森は動物が出てくるタイプの森で、もう一つの森は魔物が出てくる森がある。魔物というのは森には魔素が溜まりやすくなっている森があるらしく、そこで大量の魔素を浴びた動物が突然変異することで生まれるらしい。薬草などもこの森でたくさん取れるので定期的に冒険者が入っているようだ。



「アレク、動物しかいないと言っても気を抜いてはいけないよ。しっかり相手の動きを見切って急所を一撃で仕留めるのが今回の目標だからね。」

「がんばります。」


内心ちょっと不安だったりする。

理由としては今日が動物を”殺す”のが初めてっていうのがやっぱり大きいんだよね、何かが死ぬのを見るのが嫌な性格だから余計に自分が殺すってなるときつい部分がある。



森の奥に進んでいくと一匹のウサギを見つけた、ウサギはこちらに気付いていないようだ。



「ウサギは何で攻撃するのが一番いいかわかるか?」

「逃げ足が早いから魔法で首を狙うのがいいと思います。」

「そうだな。やってみろ。」

「はい。」



右手の人差し指と親指だけを伸ばし、人差し指の先に光が集まってくるのを感じる。次にそれを圧縮させて威力を強めて一気に…..放つ!

光が小さな矢のように速いスピードでウサギの首元に飛んでいき突き抜けた。



「おお、すごく上達したじゃないか!それにしても”光属性の魔法”は本当に便利だな。」

「ですよねぇ〜」

ま、これしか使えないけどね!

光属性が使えることがわかったのは訓練を始めて1ヶ月が経った時だった。



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<訓練開始から1ヶ月経ったある日>



「今日の魔法は”属性判定”をする!」

いつものように庭に魔法の訓練をしに出てくると、いきなりアリスさんがそんなことを言い出した。



「属性判定ってなんですか?」

「魔法にはそれぞれ使える属性と使えない属性があるんだ、だから魔法の技術を伸ばすためには、火・水・土・風・雷のそれぞれ属性に合ったトレーニングをしないといけないんだよ。」

「なるほど、それってどうやったらわかるんですか?」

「ここに一枚の紙がある、この紙が燃えたら火、水浸しになれば水、土が出てくれば土、風が吹けば風、電気が流れれば雷って感じだね。何個か属性を持ってる場合はその属性全部の特徴が出てくる。俺はこんな感じだ。」



アリスさんの持っていた紙が風が吹いた後に燃えた。ということは、



「アリスさんは風と火ってことですね!」

「そうだよ、さあやってごらん。」



魔力を紙に込めると眩しい光が辺りを包んだ。

俺とアリスさんは眩しすぎて目を閉じてしまう。光が治った後アリスさんをみると何やら考え込んでいる様子で顔をしかめていた。



「…..あの〜俺の属性ってなんですか?」

「…..すまない、わからない。ちょっと詳しい奴を呼んでくるから待っていてくれ。」



待つこと30分、アリスさんとその後ろからアリスさんと同じような髪型で、色はブロンド、とても中性的な顔立ちなので男なのか女なのかわからないがとても綺麗でイケメンな人なのは間違えない。

アリスさんは目の前に来ると後ろの人の説明を始めた。



「またせたな、こいつはメローレ・フォン・ローガン、宮廷魔法師団団長で”賢者”とも呼ばれている。」

「始めまして、あなたがアレクちゃんね、よ・ろ・し・く♡ 私はメローレちゃんって呼んでね。」

「…..はい。メ、メローレちゃん。」

「うん!いい子ね、アレクちゃん!」



なんかちょっと言い方、というか声は完全に男の声なのにその喋り方はちょっと気になるが今はそれどころじゃない、早く本題を聞いてみたい。



「あの、俺の属性って結局なんなんですか?」

「ん〜実際に目の前で見てみたいからやって見せてくれるかしら?」



メローレちゃんの目の前でもう一度同じことをしてみるとメローレちゃんが真剣な顔になってうなずいた。



「アレクちゃん、それからアリスちゃん、いい?今から話すことは誰にも絶対に話したらダメよ。これは私も本の中以外で見たのは初めてだけどおそらく光属性よ。本当かどうかはわからないけど文献によるとね、『曰く、光の力を持つもの地上に生まれし時、時代の大きな流れが変わる時。曰く、光のその物生まれし時、必ず闇の力を持つもの生まれし時。曰く、その二人が出会った時、世の新たな理生まれし時。』ていうのがあるの。このことを知るには古代文字を読む必要があるから知っていたとしても私と同等か、それ以上のものだけよ。」

「お前ほどのものか...いるとしたら長命な”エルフ”と”竜族”ぐらいだな。」

「ええ…ただ、帝国側の戦力がわからない以上、人間にいないとは限らないわ。帝国以外の国は把握済みだから大丈夫よ。」

「あの〜 そうだとしたら、俺は学院の試験の時はどうすればいいんですか?魔法が使えなかったら合格できないんですけど…」

「それならアレクちゃんの時だけ私が試験監督をやるわ。ちょうど良く陛下からの推薦だから私が見ると言っても全く不自然じゃないもの。」

「そうだな…メローレ、自給自足試験の時もついていてもらうことはできるか?」

「できると思うわ。」

「じゃあ、迷惑かけるがそれで頼む。あと、光属性の訓練を秘密に頼んでもいいか?」

「オーケーよ、試験監督もやるんだからお忍びでくるわね。学院の中では雷属性で通せばいいと思う、見る人が見ないと気づけないもの。」



こうしてメローレちゃんと光属性の練習を重ねていった。

光属性は5属性全ての特徴、火の強火力、水の応用性、土の耐久性、風の機動力、雷の鋭さを兼ね備えていた。

だから余計に扱えるようになるまで時間がかかって、少し予定が遅れてしまった。



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森での初日はウサギ、熊、猪などを魔法と剣をどちらも使って狩って行った。

明日からは剣に魔法を纏わせて戦う訓練をする予定だ。








一方、アリスとアレクが屋敷に帰り着いたのと同じ頃、屋敷街のある屋敷では十数人が集まって何やら話し合いをしていたのだった。






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