第7話 リスタート

本文

( 転移前の王宮 )


中性的な顔立ちの男が廊下をかけていく。

目的地は第八士団倉庫である。


( アリスちゃんにつけていた使い魔の反応がいきなりなくなったわ、必ず何かあったはず。私一人で向かうよりあの子を連れて行った方が安心ね、アリスちゃんのことに関してはあの子以上にわかる子はいないわ。)


そして、倉庫の前についていた。


(コンコンコン!)


「エリシアちゃん入るわよ!」


「ん?メローレ、そんなに慌ててどうしたんですか?今武器のチェック中なんですが。」


「エリシアちゃん今はそれどころじゃないわ、落ち着いて聞いてね?アリスちゃんにつけてた使い魔の反応が消えたの。何かあったのよ」


「そんな、アリスに限って、そんな...」


「いい?動揺している場合じゃないわ、一刻も早くアリスちゃんの所へ向かうの。おそらくアレクちゃんも危ないわ」


「わかった、すぐに行く。」


二人は大急ぎでアリスとアレクの元へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



( アレクが光に包まれた後)



「貴様!アレクをどこへやった!!」


鬼の形相でそう言葉を発するアリス


「ふふふ、心配いらないよ。ち・ょ・ー・っ・と・強・い・魔・物・が・出・る・所・に送っただけだから、君であれば帰ってこれるだろうね。ま、あんなガキが帰ってこれるはずもないがな! ははははは!!」


「.....ぜったいにおぼえてろ.....」


「おや?遺言でしょうか?そーですね。最後の言葉くらい聞いておいてあげましょうか、ほら早く言いなさい。そろそろ貴様もどこかへ飛ばされるんだからな!」


「.....どこへ飛ばす」


「カ・ナ・リ・ア・迷・宮・。」


「.....うそ、だろ」


「いいえ、ほんとですよ。その最下層に行く予定です。」


「嘘を言うな、誰も攻略したことのない迷宮の最下層だぞ? 笑わせるな!そんな所に転移させる事ができるわけないだろうが!」


「はぁ、どうやら貴様は何も分かっていない。この転移術式は座標とその正確な高度さえわかればどこへでも送り込めるんです。それすらわからない無能でしたか、先代の剣聖、お父上が見たらさぞかし残念に思うでしょうね。おっと、時間のようです。」


「待っておけ、俺は生きて必ずお前の首をとる。」


アリスの足元が眩く光出す。

その光が治ったあとには何も残っていなかった。


「やれやれ、本気で言ってるんでしょうかねぇ?人類未踏の地に送られたんですよ?帰ってこれるわけがないでしょう。 これで...これでようやくあの方の元へ帰る事ができる! お待ちください、このバロナ手土産を持って会いにいきますぞ!!あはあは、あははははは!!!」


「そう簡単に、この場から逃れられるとでも?」


「っっっっ!! 馬鹿な!なぜお前ら二人が⁉︎」


バロナが振り返ると茶髪の女騎士と綺麗カッコいいオネェさんが立っていた。


「...1番最悪の感じで予想が当たっちゃったわねぇ」


「メローレ、今はそれよりこいつを討ち取るのがさき」


「あら?エリシアちゃんそれだとお・話・し・ができないわ。だからね...えい!」


三つの土の円がバロナの体に巻きつき、身動きを封じていた。


「ね? これならお話しが聞けるでしょ? ねぇ、アリスちゃんはどこ?それと一緒にいた子供は?」


「ふふふ、アリスならカナリア迷宮の最下層さ!ガキは適当な魔物のいる森に飛ばしたよ!」


「あらそう、でもあなた見捨てられたのね。もう帝国自慢の影の気配がさっきまで3つくらいあったのにもう何もないわ?」


「うるさい!!ここで捉えられるくらいなら...☆$%°#〆〒○*に栄光あれ!!!!」


「ん!!! メローレ急いで口を塞いで!!!」


「えい!!!」


土の猿轡がバロナの口に巻かれるがその時すでにバロナは口から泡を垂らし、白目を向いていた。


「...メローレ」


「...ダメね、死んでるわ。これは帝国がよく使う自殺用の薬よ。」


「クソっっ!アリスをカナリア迷宮へだと?ふざけるな!アレクもどこへやった!」


「エリシアちゃん落ち着きなさい、手から血が出てるわ」


エリシアの握った拳の中から憎しみが混じったような色の濃い血が流れ出ていた。


「あと少し、あと少し早ければ...」


「エリシアちゃん、もう過ぎたことは戻せないわ。とりあえず戻ってこの事を私達で王様に報告しなくちゃ、さっき鎌をかけて帝国の人間か試してみたけどやっぱりそうね。だとしたら、まだ内部にも帝国の人間はいるはずだわ。アリスちゃんが戻ってくるまでに片付けるわよ」


「メローレ...アリスは、アリスは戻って来てくれるの?だってカナリアの迷宮だよ?私アリスがいなくなったら...」


    ( パシン! )


「しっかりしなさい!」


メローレがエリシアの頬を思い切りビンタしていた。


「あんた、何年アリスちゃんのそばにいたの?アリスちゃんがどれほどの男かあなたが1番よく分かっているはずよ!アレクちゃんもあれだけの訓練について行っているのよ?大丈夫に決まってるじゃないの!なのにいつまでもメソメソしてるつもりなの?聞いて呆れるわ!アリスちゃんが一度でも諦めたりメソメソした事があった?ないわよ!私も頑張るからあなたもしっかりしなさい!」


メローレの顔を見ると目から涙が溢れてきていて、頬も興奮しているのか赤く染まっている。


「っっっご、ごめん...メローレ...」


「...いい?泣くだけ泣いたらもうおしまいよ、絶対アリスちゃんは帰ってくるから、アレクちゃんもあのアリスちゃんの弟子よ?絶対に帰ってくるわ。」


優しい声で最後にメローレそう言葉をかける。


溢れ出す涙を堪えれずにすすり泣くエリシアを抱き抱えたままメローレも静かに涙を流していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(アレク)


光に包まれたあと、俺は森の中にいた。

日が暮れてきていて薄暗くなっている。その薄暗さが俺の肌を包み込むように広がり、その雰囲気、感覚が俺の恐怖心をこれでもかと煽ってくる。


ちょうど試験にサバイバルの項目があって助かった。知識はあるからなんとか生き延びれそうだ。でもここがどこにあってどんな場所なのかがわからない。果たして帰れるのだろうか?そんな不安も俺の恐怖心を煽ってくる。


アリスさんに言われていた事を思い出そう、『気持ちは常に冷静に、焦らずに頭を回せ、折れた気持ちは戻らないから絶対ったいに意地でも折るな』よし、やろう。





こうして俺の王都帰還への戦いが始まった。

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