第3話 謁見

城門をくぐると中は煌びやかで、今まで目にした

ことがない物で溢れ返っていた。

木ではなく煉瓦造りの建物、街ゆく人の無地では

なく少し模様が入っていたり刺繍が施してある服、

何よりもみんなの顔が生き生きしている。

俺はこんなにたくさんの人が幸せそうに笑って

いるのを見たことがなかった。



さらに、アリスさんたちを出迎えるために大勢の

人々が通りに出てきていた。

通りは王城らしき場所まで続いているようだ。



「アリス様〜〜!!」

「キャーーーー!今アリス様が私に手を振ったわ!」

「はぁ?私よ!!私に決まってるわ!!」

「いやいや、それよりアリス様の前に座ってる子よ!ちょっと可愛すぎない?アリス様×あの少年…

うん、ありね。」

「あんた何を言ってる…いやありね、ありよりのありよ。」



などの声もあれば



「「エリシア様ーーー!! 結婚してくれーー!!」」

「エリシア様は俺のだ!」

「ふざけるな!俺のだ!」

「ちょっと待て、あのアリス様の前に乗ってる坊主

は誰だ?まさか!!子供か?子供なのか?」

「あほ、落ち着け、見た目10歳は超えてるだろあの子は、そしたらエリシアたんは9歳で子供産んでることになるじゃないか、それはないだろ?」

「いや待て、お前何しれっと”たん”呼びしてんだ?

こないだ話し合いで”様”に決まっただろうが!」



など、聞いてはいけない、いや聞こえてはいけない

会話が聞こえた気がしたが気のせいだろう、そう

気のせいなんだ。

しかし改めてこの二人は人気がすごいことを実感した。



馬に乗ったまま進んでいくと大きな門が出てきた、

アリスさんによるとこの門は貴族居住区と平民居住区を分けるためのものらしい。

さらに進むと、もう一つ門が出てきた、これが王城の入り口のようだ。アリスさんとエリシアさん以外の団員とはここでお別れした。



「アレク、今から王様に謁見します。私の後ろについてきて動きを真似してください。それだけで構いません。エリシアはその後ろからサポートをお願いします。」

「わかりました団長。アレク、何かわからないこと

があれば拳を握ってください、そうすれば何をすべ

きか伝えます。」

「はい。」



アリスさんとエリシアさんの空気が変わったことに

対して少し緊張する。

後ろを歩いていくと豪華な装飾が施された扉の前に

着いた。扉の前の男にアリスさんが何かを喋ると門を開けてくれた。

中は赤い絨毯が引かれており、その両サイドには

豪華な服を着た人たちが並んでおり全員がアリスさんを見ていた。空気が重い、こんな中毅然として歩けるアリスさんはやっぱりすごい。

歩いていくと王様であろう人の前でアリスさんが膝

まずいたので俺も慌てて真似をする。

王様は赤いローブの様な服を見に纏い、顔のシワは

歴戦の猛者を連想させ、長く伸ばした白い髭と白い

髪が特徴的だ。



「表をあげよ。」



アリスさんが顔を上げなかったので俺も顔を上げなかった。顔あげなくていいの?



「よい、表をあげよ。」



次の声でアリスさんが顔を上げたので俺も顔を上げる。



「陛下、此度の領地奪還戦、無事に成功いたしました。

帝国の領主、部隊の将それぞれ首をとってまいりました。こちらの犠牲は十数名のみでございます。

現地には1万ほどの兵を残してありますので、そう

簡単には攻められません。 以上でこの度の遠征の

報告を終わりとさせていただきます。

第八士団団長アリスシス・ヴァン・ツーヴェルク」

「アリスシス、ご苦労であった。犠牲が十数人とは

えらく少なかったのう。」

「はい、私も驚きでございます。兵士たちが故郷の

ために懸命に動いてくれたおかげであります。」

「そうか、して第八士団の犠牲は?」

「0でございます。」

「さすがだの、よく鍛えられておるわ。最後だが、そこの少年はなんだ?」

「奴隷として敵の領主に捕らえられておりましたので保護してまいりました。そこで私の屋敷で育てたいと考えております。今回はその許可を得るために連れてまいりました。」

「アリスシスがそういうなら構わん。して坊主名前はなんという。」



俺は拳を握る。

緊張しすぎて頭を回す余裕がなかったのだ。



(そのまま答えなさい)



エリシアさんがそう小声でささやいてくれた。



「お、私の名前はアレクセイ・アンドレイと申しましゅ。よ、よろしくお願いしましゅ。」



しまった2回もやってしまった。



「ほっほっほ、よいよい!気に入ったぞアレクセイ。そんなに緊張するな、お前の様な子供に完璧は求めておらん。して年はいくつじゃ?」

「11歳です。」

「来年かの……よいわかった。アリスシス、アレクセイは学校には入れるつもりはあるか?」

「はい。そう考えております。」

「やはりかの、ではどこの学校にするのだ?」

「陛下、できればダ・ズ・ベ・ス・ト・学・院・に入学させていただければと考えております。」



アリスさんがそう発言した後、部屋の中がざわつき始めた

「ふざけるな!なんで貴族でもなんでもない子を由緒正しきダズベスト学院に入学させねばならんのだ!断固反対する!」

「そうだ!調子に乗るな、八騎士団最下位の癖して

ちょっと勝ったからって調子に乗るな!」



        『控えろ!!』



王様の右隣にいた茶髪に顎髭をのばし、がっしりとした体格で緑色で少し豪華な騎士団の制服を着た男がそう言うと、部屋の中は静まりかええっていた。



「ありがとう。」

「はっ!」

「まずは私の考えを伝えよう。アレクセイをダズベスト学院に入れる理由はそれだけの才能があるから、と言うことか?アリスシスよ。」

「いえ、まだ才能などは手合わせをしていませんのでわかりません。ただ…言葉では言い表せませんが、直感的に可能性を感じました。それが推薦理由です。もちろんこんな馬鹿げた理由であってはいけないと思っております。ですがどうか御一考頂けないでしょうか。全ての責任は私がとります。」

「…わかった。ちょうどよいな、褒美を聞く手間が省けたわ。良かろう。アレクセイの入学が此度の戦で、犠牲を少なくしたお前への褒美だ、受け取れ。」

「ありがとうございます。」

「学院の方にはわしから言っておく、入学試験だけは受けてもらうからな。もう下がってよいぞ。」



部屋を出ると疲れがどっと出てきた。

無意識のうちに気を張りすぎてしまっていたようだ。王宮の庭のベンチに腰掛けて休んだ後、

アリスさんはまずは王宮を案内するといって、

歩き始めた。

王宮の説明を簡単にすると、さっきいたのが謁見の間

でそのほかには温泉や、訓練場、騎士団と魔法師団の集まる部屋がそれぞれ8個づつあるようだ、ここには武器や防具が置かれてある。

ちなみに王都には学校が3つあり1つ目はダズベスト学院、ここは王族や伯爵、公爵、宰相家など国の重鎮の子供が入学するところのようだ。ここでは、魔法と剣術どちらも学べて、もちろん座学もレベルが高い。

2つ目はキース学院だ、ここは下級貴族の子供達と2年生から3つ目の学校で成績が良かったものが何人か

特待生として入学するらしい。

3つ目はスタン学院だ。ここは平民の子達が集まる学校である、だから1番人数が多い。




こういった説明を聞いているうちについにアリスさんの屋敷の前についていた。

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