◇その3.妖怪ふた口女じゃねーんだぞ!
「ねぇ、寿明。アンタ、最近、ちょっと太ってきたんじゃないかい?」
ウルトラメイデンとの二人三脚状態に少しずつ慣れてきた5月のとある日曜日。夕飯の席で俺は、お袋にそんな指摘を受けた。
「えー? そんなはずはないんだけど……」
むしろ、週単位で出現する妖怪獣との戦いに四苦八苦してるんだから、ちょっとくらい痩せてもいいはずだ。
最近、暇な時には空手やプロレスの本読んで、我流ながら部屋でそういう型の練習もしてるし。
しかし、念のため風呂場で体重計に乗ってみると、1キロの微増。さらに鏡をしげしげと覗きこんでみたら、確かに顔が幾分ふっくらしてきたようにも見える。
(そう言えば、ジーンズがちょっとキツくなってきたような気も……)
「こないだから時々、夜中に冷蔵庫の中のアイスとか甘い物漁ってるでしょ。そりゃあ深夜に間食してたら、太りもするわよ」
? そんなコトした覚えは……って、まさか!
慌てて2階の自室に駆け戻り、扉に鍵をかけてから、脳裡の"居候"を詰問する。
「さてはテメエの仕業か、おい!」
大方、俺が寝てから勝手に身体を動かしてたに違いない。
『はぅぅ~、す、すみませぇん! でもでも、甘いものは女の子にとって別腹なんですよぉ』
「たしかMなんたら星人は、何も食わなくても太陽光だけでエネルギー補給できるはずだろうが」
光の巨人状態だと、消化器官は退化してるって聞いたことがあるし。
『あぅ、寿明さんのイケズぅ。そりゃあ、生きていくだけなら可能ですけど……寿明さん、毎日点滴だけで栄養補給して生きていけます?』
「お前らにとっては、どっちかって言うと、酒とかタバコの嗜好品に近いんだろ。けど、仮にそうだとしても、ちゃんと事前に断わっておけよ。その分、飯食う量とか減らしておくから」
このままでは、知らぬ間に体重がどんどこ増えるトコロだったぞ。
『は、はい。ごめんなさ~い』
──などと言う会話をしたのち、俺は街中で時々甘味屋に(メイデンの強い要望で)立ち寄るハメになるのだった。
ぐぅ……俺自身は、どっちかって言うとむしろ辛党なんだが。
逆にコイツは、カレーの中辛でさえヒーヒー言って水ガブ飲みするくらい辛いのダメみたいだから、せいぜい仕返しに、今度倍辛カレーの大盛でも平らげてやるか。
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