情報過多精神的瑕疵物件 6
篠崎さんは胡座をかいて淡々と煙草を吸う。
安らかな姉の寝顔。
これらは今までも日常にあって、非日常との境を曖昧にする。
もしかしたら、さっきまでのは全て何かの間違いだったの空想は簡単に崩れた。
見渡せば部屋の造りが滅茶苦茶だ。
振り向けば雪崩込んだ玄関が遠ざかっていく。
天井が高すぎて、光が届かぬ境界線で闇が波打っている。
壁に飾られた仮面は年代も形式も文化圏もなにも統一されていない。
頭頂部を欠いて空を晒す焦げたマネキン。黒ずんだロープ。液体が満たされた薄灰色で円柱形の硝子瓶に沈む指輪。
全てに共通してるのは、姉と同じ真っ白な札が貼られている。黒が占める範囲は個々で異なる。
札が本の背表紙を隠している。剥がせと言わんばかりにはためいている。
「ここは
呆気にとられていた僕を、篠崎さんの声が引き戻す。
「呪いも想いだ。歪んでしまったり、目的を見失った」
煙草をひと息。お前も吸えと差し出された一本を咥える。
胡座で向かい合って、火は篠崎さんが貸してくれた。
「味は?」
聞かれても煙草を吸うのは初めてだ。まだ小さかった頃、近所に枯れ草を集めて野焼きを頻繁にする家があった。
強いて言うなら、その懐かしい味というか匂いとしか。
「ならいい」
呟き、いつもの遠くを見る目で吸い始めた。
ふたり分の煙が部屋を満たしていく。
背中をくっつけあって、互いに吸い終わるまで言葉を出さず。
このままでは姉が死ぬと言われたのに落ち着いている思考回路の麻痺。
煙草ってみんなこうなのか?
血管が拡張して、脳の深くで鼓動を感じる。
頭にのしかかる
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