事故賃貸物件案内所

バターナイフの切れ味は 4

案内所から名古屋駅までは徒歩で10分程。

怪しいくせして中々に立地がいい。

久しぶりに来た名古屋駅は、クリスマスに向けたイルミネーションで装飾されている。

行き交う家族連れやカップル達は何処へ行くのだろうか？

新幹線が通っているから、これから旅行へなんて人もいるのだろう。

僕はこれから一人で事故物件へ行く訳だが。

渡された地図の頼りに名鉄線で金山駅へ。

地下鉄に乗り換えて、下車したのは東別院駅。

片側三車線ある道路を乗用車や大型トラックが引っ切り無しに忙しく走っている。

地図の裏にカラーコピーされた外見を頼りに、一軒家に到着したのは16時頃。

少し奥の通りにあり、車の騒音より帰宅する学生達の話声や自転車のベルの音の方が大きく聞こえる。

乗用車１台を停めれる駐車場が右端に設置されており、レンガの塀が洋瓦の屋根の家を囲っている。

アイアンゲート越しに見える玄関は、ボロアパートの簡素な扉とは違ってモダンなデザイン。

玄関前の左手には郵便受け、右手は洗濯物を干すには充分な広さの庭になっている。

全体的に洋風に仕上げておいて、物干し台と竿では格好がつかないのか、ブロック塀が視界を遮るものというより、見せたくないものを隠しているものに感じた。

家の間取りは1LDKで二階建てで、奥の仏間以外は全面フローリング。

なんという快適さ！

期間限定ではあるが、一人で住むには広すぎる物件。トイレも共同のボットンでなく水洗で感動すら覚える！風呂は銭湯も良かったが、やはり家の中にあれば、帰り道に体が冷えることもない。

まだ家の中を見て回りたい気持ちはあるが、現実問題。先ずは食材の買い出しに行こう。

当座の金にしては割と貰ったが、自炊せずに外食だけで暮らしていける程ではない。それに着替えや一通りの生活用品だって欲しい。

少し離れた商店街に買い物へ行こうとして気が付いた。

そういえば、生活必需品とも言える自転車がない。